The previous night of the world revolution
…一方、俺の預かり知らぬところでは。

まだ、俺を信じようとしてくれている人がいた。




「こんなの…おかしい。何かの…何かの間違いだ」

彼女は泣きそうな声でそう訴えたが、周りにいた人間は、またか、とうんざりした顔をした。

何度目になるか分からない、臨時隊長会議の場で。ウィルヘルミナさんは、まだ俺を信じようとしてくれていた。

隊長会議と言えど、埋まっている席は六つだけだ。

出張組は、この非常時と言えど、連絡はされなかった。同盟国訪問中に、国のトップが暗殺されかけたので帰りますなんて言って慌ただしく帰ろうものなら、ルティス帝国の権威は地に落ちる。

要するに面子を守る為だ。オルタンスは出張組にはこのことを伝えるなと厳命し、上手いこと姉さんを俺から遠ざけていた。

「彼が、こんなことをするはずは…」

元々、帝国騎士団内での俺の信用は低い。

俺の味方をしてくれる人間は数少なく、そのうち二人…姉さんと、それと六番隊のリーヴァ…は出張中である為、このことは知らない。

残された唯一の味方であるウィルヘルミナさんは、まだ、俺を犯人だと認めてはいなかった。

「これだけの証拠を見て、まだ彼が犯人でないと主張するとは。失礼ながらウィルヘルミナ殿、現実が見えていないのではないか」

もとから俺のことを心底嫌っていたアストラエアは、憮然としてそう言った。

彼は俺が女王暗殺未遂を起こしたと聞いて、それを疑うことは一度もなかった。それどころか、ほら見たことか、とさえ思っていた。

だから、あんな若輩者を隊長に任命するべきではないと言ったのだ。言わんこっちゃない…と。

九番隊のユリギウスも同様。

他の隊長達は、まさか…とは思ったが、オルタンスがでっち上げた様々な証拠を見て、俺が犯人であると確信した。

それに騙されなかったのはウィルヘルミナさんだけだ。

しかし騙されなかったと言っても、信じられないだけ、というのが正しかった。

「それに、女王陛下ご自身が、奴に命を狙われかけたと言っている。女王陛下のお言葉を疑うのか」

「…それは…。…でも、彼がそんなことをするはずが…」

ちなみに、俺はオルタンスがどんな『犯行動機』をでっち上げたのか知らされていなかった。

教えられたとしても、どうでも良いことだった。
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