The previous night of the world revolution
「ルシファーに…ルシファーに何かあったのか?一体何が?」

「ちょっと落ち着いて、ルルシー」

血相を変えて身を乗り出す俺を、アイズが少し抑えた。

落ち着けなんて言われても、落ち着けるもんか。

ルシファーは俺の命の恩人であり、そして生涯唯一の親友なのだ。

立場は違えど、その事実に変わりはない。

彼の身に何かあったとなると、黙ってなどいられない。

「まだ報道はされていないけど…先日、王宮で大事件が起きたらしい」

「大事件?」

「ローゼリア女王暗殺未遂事件だって」

それは…確かに大事件だ。

俺にとっては敵の総大将だから、彼女の身がどうなろうとどうでも良いが…。一般帝国民や、ましてや帝国騎士団の面々にとっては…ただ事ではない。

公表するタイミングを誤れば、大混乱を巻き起こすだろう。あのオルタンスなら、そんなことにはさせないと思うが…。

世間に公表されていない情報でも、『青薔薇連合会』の情報網は根が深い。余程の機密事項でない限りは、何処にでも潜り込む。

人の口を完全に黙らせるのは難しいということだ。

「そりゃまた、とんでもない大事件だな…。それで、それがルシファーと何の関係がある」

女王の安否など、どうでも良い。

俺が知りたいのは、ルシファーのことだ。

「犯人なんだそうだよ」

「…は?」

「君の親友が、女王の暗殺を企てた。そして失敗したんだ」

「…」

何だって?ルシファーが女王暗殺未遂の犯人?

「…それは有り得ないぞ。アイズ」

「でも、そう聞いているよ。情報に偽りはない」

「有り得ない。情報が間違ってるんじゃないなら、冤罪だ」

「…随分断定的だね?」

当たり前だ。

「お前は、俺が『連合会』を裏切って帝国騎士団に情報を流していると聞かされたら、それを信じるのか?」

「信じるはずがない。それと同じことだね」

そういうことだ。

あいつがそんなこと、するはずがない。そんなことをする理由もない。

そんな大それたことをすればどうなるか、分からない男ではない。

感情に任せて突発的に…というのも考えられない。

一時の感情に流されて人を殺すなんて、有り得ない。

彼ほど非常時に冷静に対処出来る人間を他に知らないのだから。

本当に彼が女王暗殺未遂の嫌疑をかけられているなら、それは間違いなく冤罪だ。

何かの手違いで彼が犯人だと思われてしまっているのか…。

…あるいは、何者かが彼に罪を押し付けているのか。そのどちらかだ。
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