The previous night of the world revolution

sideルシファー

ーーーーー…俺は、まさかルルシーが全力をあげて俺を助けようとしてくれているとは思っていなかった。

そもそも、その頃には…頭の中身も、心の中身も、空っぽになっていたから。

生まれたときから帝国騎士団に入る為に生かされてきたのに、それを失ってしまったら、今まで積み上げてきた俺のアイデンティティは崩壊する。

俺はもう脱け殻のようになっていた。何もかもどうでも良くて、一秒でも早く死にたかった。

追放するなら早く追放して欲しかった。身体が自由になれば、自分で自分の命を終わらせることも出来たのに。

そしてようやく、その日が訪れた。

身体の傷も癒えぬままに追い出されて、俺が真っ先にすることは、一つだけだった。

とにかく、早く死ぬこと。

こんな姿になってまで、生きている理由はなかった。そもそも、生きていく術がなかった。

まぁ、そんな術があったとしても、生きて恥を晒すつもりはなかったが。

オルタンスもそんなことは分かっていただろう。だから俺を殺さずに追放したのだ。追放すれば、勝手に自殺して、永遠に口封じ出来るだろうと。

幸せに生きて、とかいうのは結局、建前みたいなものだ。

さて、どんな死に方が良いだろう。別に死ねるなら何でも良いが、高いところから飛び降りたり道路に飛び出したりすれば、人様に迷惑がかかる。

どうせ死ぬなら、人に迷惑をかけない形で死にたい。

この期に及んで他人のことを考える辺り、俺はいつまで帝国騎士のつもりでいるのか。

首吊りは見た目がグロくなるらしいから、第一発見者のトラウマになってもいけないし。

増水した河でもあれば良いのだが、この辺りにあるのは足首くらいの水かさの小川ばかりだし。

結局俺は、公園のベンチの下に置き去りにされていた茶色いビール瓶の破片を拾って、それで手首を切ってみることにした。

これで死ぬのは難しいらしいが、どうなのだろう。死にたい意思があれば死ねるだろう。多分。

かなり深く切ったので、結構な勢いで血が溢れた。

痛みは、そんなに感じなかった。

他人事のように、俺は溢れる血を眺めていた。

…これで、おしまい…か。
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