The previous night of the world revolution
「お前、このっ…馬鹿っ!」

ルルシーは真っ赤に染まっている俺の左手を掴んだ。

もう会うことは出来ないと思っていたのに。もう二度と会えないって。

それなのに、会えた。最後の最後で会えた。

もうこの世に何の未練もなかった。今この瞬間に死ねるなら、こんなに嬉しいことはないと思うほどに。

しかし。

「アイズ!これなんとか出来るか!?」

「あぁ、結構深く切ってるね…。間に合うかな」

ルルシーの後ろから来た、アイズと呼ばれた男は、ハンカチを取り出すなり、それを使って止血を試みた。

何だろう。この人…何処かで見たことがあるような…。

もう思い出せなかった。段々と意識が薄れていった。

「すぐ病院に連れていこう。アリューシャ」

「よし来た!」

アイズ、という人はもう一人の男に何やら声をかけた。

よく分からないけど…この人達は、俺を助けようとしてくれているらしかった。

もう良いのに。こんな姿になった俺を、生かす必要なんて何処にもないのに。

「…もう、良いですよ…」

俺は掠れる声で、彼らにそう言った。

「もう良い…。死んだ方が、」

「馬鹿言ってんじゃねぇ!」

ルルシーは、俺の言葉を遮って叫んだ。

「俺が自殺しようとしてたらお前は見捨てんのかよ!お前が死んだら俺が死ぬほど悲しむってことが分からないのかよ!良いか、お前…もし勝手に死にやがったら、絶交だからな!絶交!覚えとけ!」

…え。

絶交?

「…それは、嫌だな…」

「嫌なら生きろ!俺も嫌なんだよ!」

ルルシーに絶交されるのは、嫌だ。

それだけの理由で、俺は一瞬、死にたくないと思った。

そしてその一瞬が、かろうじて俺をこの世に引き留めた。
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