The previous night of the world revolution
病室に戻ると、残り物を全部平らげて「もう腹一杯で死にそう!」とか言ってアリューシャが喚いていて、うるさいので追い出した。

ルシファーは億劫そうにのろのろ動いて、病室の隅のチェストを探った。

「…何か入れてるのか?」

病室に備え付けで置いてあるだけで、何も入れてないんだと思っていたが。

「これだけ…これだけ、持って…」

これだけ持ってきた?

「あなたに、いつか…会えたら渡そうと」

「…何を?」

「お土産」

ルシファーは、青いリボンでラッピングされた、小さな白い箱を差し出した。

…何だこれ。

これが、お土産?

何だかよく分からないが、くれるらしい。

受け取って、中を開けてみる。そこには、青い宝石で出来た、薔薇を模したブローチがあった。

「…何だこれ」

「お土産…あの、アシスファルトの」

アシスファルト…というと、ルティス帝国の隣国だが。

「そこに行ったのか?」

「騎士団…のときに」

成程。俺が騎士団から去った後だな。

アシスファルトに行って、お土産を買ってきたと。

「…馬鹿だな。渡せるかどうかも分からなかっただろ」

「…でも、渡せた」

「結果オーライってか?」

ルシファーは微かに微笑んだ。

渡せるかどうかも分からないお土産を、よく買ってきたもんだ。

しかもそれを、持ってくるなんて。

「…ありがとう。大事にする」

やや少女趣味臭いが、そんなことは気にしない。

アリューシャを見てみろ。あいつ、夏になると毎年、これが涼しいからって女物のワンピースを着て過ごしている。

お前に恥やプライドはないのかと聞いても、でも涼しいんだもん、の一言で全部終わる。

それを思うと、女物のブローチがどうした。

俺達、『青薔薇連合会』だからな…。いっそこれをエンブレム代わりにでもするか?

俺は宝石を見る目はないが、アシスファルト産の宝石ということは、かなりの高級品だ。

ブローチとして使うのが勿体ない。インテリアにして飾ろうか。

「…ルルシー」

「あ?」

俺は驚いて顔を上げた。

ルシファーの方から話しかけてくれることは、皆無と言って良いほどなかったからだ。
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