The previous night of the world revolution
「もう…会いに、来てくれなくても良い、ですよ」

「…は?」

「もう…充分、恩は返して…」

恩は返してもらったから、って?

「俺に…囚われてたら、あなたは…」

「馬鹿言ってないで寝ろ」

「…」

「本当馬鹿だなお前」

精神病の患者に、面と向かって馬鹿呼ばわりとは。

俺も大概馬鹿なことをしてるが、どうしてもそう言わざるを得なかった。

だってこいつは、馬鹿だ。

「充分恩を返したかどうか、決めるのは俺だ。俺はまだ返しきってないと思ってるし、返しきった後は今度は、お前に恩を売るんだ。勝手に突き放すな」

「…」

「良いか。俺はお前が元気になるまでは恩を返したとは思わないからな。悔しかったらさっさと元気になれ。何せお前の親友は、お前しか友達がいないからな。そう簡単に手放す訳ないだろ」

俺が傍にいると、早く病気を治せとプレッシャーを与えられているようで、そりゃ不快だろう。

それは分かる。でも。

「いつまででも待つって、言ったろ?」

「…」

「いつまででも待つから。いつか元気になってくれれば良い。俺は絶対に、お前を見捨てたりはしないなら」

どっかの、糞の騎士団みたいには。

捨てるつもりなら、最初から拾ったりしないのだ。

俺も。ルシファーも。

ルシファーは唇を噛み締めて、小さく頷いた。
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