The previous night of the world revolution
今生きているのは脱け殻。中身のなくなった器が、持ち主の意思に反して勝手に鼓動してるだけ。

そう思わないと発狂しなければならないほどに、俺は深く傷ついていた。

立ち直ることを諦めた訳ではなかった。

俺だって、元気になれるならなりたかった。

誰が、精神科の病室で一生を終えることを願うだろう。

ルルシーがそう信じてくれているように、俺は強くなりたかった。辛い過去を全部乗り越えて、また第二の人生を歩むことが出来たらと、何度も思った。

でも、出来なかった。

突き飛ばされて倒されて、また立ち上がるだけの力が、俺の中にはもう残っていなかった。

立ち上がらなきゃって思うのに、身体がついてきてくれない。

何をするのも億劫で、心が遠くに離れていってしまったようで。

思考が上手く定まらなかった。

自分が惨めで堪らない。毎日病室のベッドの上で、身の回りを世話をしてもらわなきゃ生きられない自分が情けない。

ベッドの上にいると、俺は嫌なことばかりを考えてしまった。

笑顔で介助してくれるスタッフが、本当は心の中で俺を馬鹿にしてるんじゃないか、とか。軽蔑してるんじゃないか、とか。

誰かが廊下を歩く音がすれば、病室を覗かれているんじゃないかというような気分になって。

大好きなルルシー相手でさえ、心の中ではもう愛想を尽かしてるんじゃないかと考えてしまって。

自分でもそんな妄想はおかしいと思うのに、嫌なことを考えるのをやめられない。

それどころか、誹謗中傷の幻聴まで聞こえてくるのだ。

そんなとき俺は、耳を塞いでうずくまる。生きてるのが恥ずかしくて堪らなくて。

息が苦しかった。

病院のスタッフに励まされ、宥められ、「落ち着く為のお薬」を渡される自分が、惨めで情けなくて。

もう駄目だと。もう生きていたくないと心から切望するのに。

ルルシーはそれでも、俺はまだ立ち直れると。元気になれると信じていた。

こんな欠陥品が、どうやってまた立ち直ることなんて出来ようか。

死にたい死にたいと思いながら生きていくなんて、俺には出来なかった。
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