The previous night of the world revolution
当然のことではあるが。

ルルシーとその同僚以外には、俺を訪ねてくる人はいなかった。

そもそも俺がここに入院していることを、知っている者がどれほどいるか。

ルルシーが厳重に隠しているから、オルタンスでさえ知らないはずだ。

当然…姉さんも、ウィルヘルミナさんも、俺が生きていることすら知らない。

もしかしたら、水面下で探しているのかもしれないが。

探してもらったところで、どの面を下げて会えようか。

特に姉さんには、もう二度と会いたくなかった。

別に彼女に何かされた訳ではない。姉さんはただ、真実を知らないだけだ。

きっと彼女は恨んでいるだろうな。俺を憎んでいるだろう。

帝国騎士団の、そしてウィスタリア家の恥晒し。姉さんにとって俺は、そういう存在だ。

それでもまだ、俺は姉さんを信じたかった。

本当のことを話せば、同情してくれるんじゃないかって。

けれど同時に、俺の中には過去の記憶が甦る。

…いじめられていたとき。助けてって言ったのに、助けてくれなかったよね。

一度裏切られている。助けてくれると思っていたのに、むしろ突き飛ばされたときのことを、俺は覚えている。

それを思うと、姉さんが俺の味方になってくれるという確信が持てなかった。

味方になってくれる、なってくれない…そんなアンビバレンスな感情が、何度も頭の中をループする。

それがまた、酷く辛かった。

…俺はただ、姉さんに誇れる弟でありたかっただけなのに。

どうしてこんなことになってしまったのか?

一日の内に、それを考えなかった日はなかった。
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