The previous night of the world revolution
その日、俺は介助してくれるスタッフに、待合室に行こうと誘われた。

記念祭の中継を生放送しているから、観に行こうと。

悪気がないことは分かっていた。国中がお祭り騒ぎをしているというのに、いつもと同じように一人で部屋の中でぼんやりとしている俺を、気遣ってくれたのだろう。

入院生活が二年を過ぎた俺が、社会から完全に隔絶されてしまっていることを心配してくれているのだ。

少しでも世間の空気に触れるようにと、その人はテレビでも観ようと誘ってくれたのだ。

正直、俺は行きたくなかった。記念祭になんて興味はなかったし、テレビも観たくはなかった。

でも、断るなんて生意気なことが出来る立場じゃないと思っていたから。

俺は頷いた。行く、と答えたのだ。

このときに首を横に振っていたら、俺は今でも、あの病院のベッドの上で過ごしていたことだろう。

勿論、そのとき俺を誘い出してくれたスタッフを恨んだことは一度もない。むしろ花束を送りたいくらいだ。

あの人が俺を誘い出してくれたから、俺は息を吹き返すことが出来たのだから。

俺は車椅子に乗って、病院の待合室に行った。

そこには他の患者もいて、ぼんやりとテレビを眺めていた。

テレビの中は、見覚えのある王宮のバルコニーを映していた。

丁度そこに、ローゼリア女王が現れた。

途端に大きな歓声があがり、詰め掛けた多くの帝国民が小さな国旗を振って、彼女を祝福した。





その、瞬間だった。




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