The previous night of the world revolution
マフィアの本拠地に足を踏み入れるって、どんな気分になるだろう。

普通の人なら、びびるどころではないだろう。ビルとビルの間で綱渡りしろと言われるのと同じくらいの恐怖だ。

だが、俺はまるで怖くはなかった。ルルシーが傍についていたからというのもあるし、そもそも一度は自殺しかけた身だ。今更恐れるものなど何もない。

これでも、元帝国騎士団の隊長だ。この『青薔薇連合会』という組織がどれほど強大で、かつ強力であるかはよく分かっている。

彼らが本気で帝国騎士団と対立したら、国が崩壊するほどの甚大な被害をもたらすことは明白であった。

そして、俺がこれから会うのは、その『青薔薇連合会』の首領。

名前は…アシュトーリア・ヴァルレンシー。

一体どんな人なのだろう?ルルシーの上司なのだから、つまらない人間ではないと思うが…。

「…覚悟は良いな?」

エレベーターの最上階。一際重厚な扉の前で、ルルシーは俺に最後の確認をした。

覚悟?

何を今更。そんなものは、もうとっくに出来ている。

「勿論」

「…分かった。じゃあ、行くぞ」

ルルシーは、その重い扉をノックした。

「アシュトーリアさん。連れてきました」

「…入って」

部屋の中から、若い女性の声がした。

…今のが、アシュトーリアさん?

扉を開けた先には、ゆったりとした革張りのオフィスチェアに腰かけた、物腰柔らかな女性がいた。
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