The previous night of the world revolution
しかし、翌日。

「…」

「…」

「…何よ、言いたいことがあるなら言いなさいよ」

「…いえ…」

本日の、シュノさんの髪型を。

一言で例えるなら、ライオンのたてがみ。

下敷きで全力で頭を擦って持ち上げたかのような、そんな頭になっていた。

昨日のあれは夢だったのだろうか?

「…どうしてそんな悲惨な頭になってしまわれたんですか」

「うっ…う、上手く行かなかったの!」

恐らくシュノさんは今朝、昨日俺がしたみたいな髪型にしようと思って、鏡の前で奮闘したのだろう。

だが、見事に惨敗した。

そのなれの果てが、このたてがみなのだろう。

想像すると微笑ましいのだけど、今日一日こんなたてがみ頭の上司のもとで仕事をしなければならない部下としては、非常に不本意なので。

「…ちょっと、そこに座ってください」

「…やってくれるの?」

「やります、やりますよ」

こうなったら、やるだけやってやる。

上手く出来ないかもしれないけど、少なくとも今のこれよりはましになるだろう。

俺はバサバサになったシュノさんの髪の毛を丁寧にとかしてから、サイドの毛束を左右共三つ編みにして、それをまとめてハーフアップを作った。

相変わらず自分の腕前に感激である。

俺は本格的に美容師への転職を検討するべきだな。冗談だけど。

シュノさんも、昨日のようにきらきらした目で鏡を見つめていた。

「はい、出来ましたよ」

「…ありがと」

「どういたしまして」

「…」

シュノさんは、ちらっ、と俺の顔を見た。

「…明日からも、やってくれる?」

「…仕方ないですね。喜んで」

俺がそう答えると、シュノさんはぱっ、と顔を明るくさせた。

全く。俺も大概弱い。

まぁでも、良いんじゃないだろうか。『青薔薇連合会』の人間は、皆家族なのだそうだから。
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