The previous night of the world revolution
ーーーーそんな調子で、俺は順調にマフィアに馴染んでいった。馴染むという言い方が正しいのかは分からないけど、すっかり順応した。

自分が悪であることに、疑問を抱かなくなっていた。

むしろこちらの方が居心地が良かった。まるで戻ってくるべきところに戻ってきたかのような…そんな気すらしていた。

俺ってもしかして、最初からこっち側の人間だったのかなぁ。

ぐだぐだと悩んでないで、さっさとこっちに来れば良かった…なんて思いながら。

その日も俺は、日課となった上司のヘアアレンジに精を出した。

最近ではすっかり上手くなって、シュノさんを始め、ルルシーの髪をコテで弄り回しており、ルルシーは俺の顔を見るなり逃げるようになった。悲しい。



さて、そんな訳で今日も。

「はい、出来ましたよシュノさん」

「ん」

今日のシュノさんの髪型は、お団子にした。

我ながら惚れ惚れするほどばっちり決まっていた。

部下の仕事ってこんなんじゃないよなぁとは思うものの、ルーティーンと化せば苦ではない。

「聞いてくださいよシュノさん。俺この間、ルルシーの髪を内巻きくるくるにしようとしたら、真顔で『やめろ』とか言うんですよ。酷いですよねー」

「それ、私にやって」

「良いですよ。じゃあ明日はコテ持ってきますね」

俺のコテテクニックはめきめきと向上しているので、上手く出来ることだろう。

こんなことを毎日やっているからか、最近シュノさんとの距離が近づいている気がする。

少しは俺のことを信用してくれただろうか?信用がないなら髪を不用意に触らせはしないだろうが。

ヘアアレンジで上司と仲良くなるというのも如何なものか。

まぁ、その辺は臨機応変に。

「髪、伸ばしたらもっとアレンジの幅広がりますかねー」

「私、あんまり長いのは好きじゃない」

「じゃあルルシーに髪伸ばしてもらいましょうか。あの人髪質がふわっふわで、弄り甲斐があるんですよねぇ」

「ルルシーは言うこと聞いてくれるの?」

「割と押せば頷いてくれる人ですよ。ご飯も作って~って言ったら、何だかんだ作ってくれますし」

それにしても昨日のチキンサルサ、美味しかったなぁ。ルルシーのサルサはルティス帝国一だ。

肉料理はあまり好きではないけど、ルルシーの料理は不思議と喉を通る。

「今度、シュノさんも一緒に行きましょうよ。ルルシーのご飯集りに。美味しいですよ」

「ふーん…。分かった。考えとく」

『青薔薇連合会』に入って分かったことだが、基本的に、シュノさんはルルシーやアイズ、アリューシャ達とは少し距離がある。

性別が違うから、というのもあるのかもしれないけど。

確かにシュノさんは、ちょっと融通が利かないところもあるし、壊滅的に手先が不器用でもあるけれど、でも悪い人ではないから。

もう少し距離を縮めたいなぁ、と思うのだ。お節介かもしれないけど。




…などと。

呑気な話をしていた、矢先であった。

いきなり、末端の構成員が一人…とある凶報を報告しにやって来た。




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