The previous night of the world revolution
…ついさっきまで、平穏だったのが嘘のようだ。

とはいえ、俺達はマフィアなのだから…こっちの方が、当たり前なのだ。

俺とシュノさんの目の前には、歯をがちがち鳴らしながら震える男が、数名。

彼らは全員、後ろ手に縛られていた。

その身体は傷だらけで、生々しい拷問の痕が残っていた。

…なんとも滑稽な図である。

大の男が、自分より遥かに年下の子供を前に、がたがた震えてるいるのだから。

これじゃあ、まるで俺達が彼らを虐めてるみたいじゃないか。

まぁ、実際虐めてるようなもんだけど。

それもこれも、全部彼らの自業自得なのだ。

これからこの男達は、殺される。

自分達の運命が分かっているのか、彼らは必死に命乞いをしていた。

どうやら彼らは、随分堪え性がないらしい。

拷問の痕を見るに、爪三枚と全身の殴打くらいで、必要な情報は全部吐いたようだ。

そして、自白させた結果は、黒。

問答無用の真っ黒だ。

だからこそ、幹部であるシュノさんが呼ばれた。

「…悪いけど、楽に殺す訳にはいかないわ」

シュノさんは、冷たい声でそう言い放った。

見た目はただの少女だというのに、その姿は貫禄に満ちていた。

成程、泣く子も黙る『青薔薇連合会』の幹部なだけある。

「私達を裏切ったらどうなるか…。分からせてあげないと」

醜い男達の命乞いには、全く耳を貸さなかった。

そう。裏切り。

彼らはやってはいけないことをやってしまった。それが即ち、『連合会』に対する裏切り行為だ。

この男達は、『連合会』傘下のとある企業の重役である。

『連合会』の融資を受けて、上納金を納める、『連合会』の息のかかった傘下組織の一つ。

だというのに彼らは愚かにも、他の非合法組織とも癒着して、『連合会』の金と情報を流していたのだという。

それは我々に対する重大な裏切り行為であり、何より忠誠を求めるアシュトーリアさんが最も嫌うことだ。

故に、生かして帰す訳にはいかない。

更に彼らを残酷な方法で処刑することは、他の傘下組織に対する見せしめにもなる。

『青薔薇連合会』を裏切った者は、こんな凄惨な末路を辿ることになるんだぞ、と。

それを示して、下の者に畏怖を与える。これも幹部としての、重要な仕事だ。

「…ルレイア」

「はい」

シュノさんは、くるりと俺を振り向いた。

「出ていって良いわ。あなたはまだ見ない方が…」

「別に構いませんよ。拷問して、殺すんでしょう?」

彼女はどうやら、俺が血を見ることに慣れていないと思っているようだ。

けれども、それは大きな誤解である。
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