The previous night of the world revolution
夜。

俺は身支度を整えて、駅前に向かった。

するとそこには、既にルルシーが来て待っていた。

ほらほら。やっぱり付き合ってくれる。

「こんばんは、ルルシー。本当に来てくれてありがとうございます」

「お前が誘ったんだろ」

「ルルシーが拒否したら、仕方ないからアリューシャを誘って、アリューシャが拒否したら、仕方ないから適当な女を呼びつけて朝まで遊ぶところでした」

「はいはい。良いから、カラオケ行くぞ」

「わーい」

アリューシャと行ってもいいけど、やっぱりルルシーでないとつまらない。

ちなみにアイズはカラオケ行っても歌う曲がないからと歌わないし、シュノさんとは一度行ったことがあるけど、彼女は壊滅的音痴で耳が破壊されるかと思った。

その点ルルシーはそれなりに歌う曲があるし、何よりルルシーの歌は上手いのだ。

採点すると95点くらい叩き出してくる。

だからルルシーと一緒にカラオケに行くのは楽しい。二人でデュエットなんかすると物凄く楽しい。

この世にこんな即物的な楽しみがあるとは。俺はカラオケすら知らず生きていたのだと思うと切なくなってくる。

「…にしてもお前、また凄い格好だな…」

「そうですか?」

ルルシーは俺の全身をじろじろ見ては、眉を潜めた。

リーフリルに会いに行くときはシンプルな格好をさせられたから、思いっきりはっちゃけてみたのだが。夜だし。

相変わらず黒ずくめの格好だが、今夜は黒いリボンつきの黒帽子に、首輪に似た黒いチョーカーをプラスした。

ピアスはリングブレスレットとお揃いの、黒い薔薇と蝶を模したお気に入りの品。編み上げブーツも当然黒で、そして女物である。

メイクも完璧で、今夜はコテで髪を軽くウェーブさせてきた。

ネイルは先程ネイルサロンで、今夜はゴージャスに決めてもらった。

「ちょっと派手ですかね?」

「ちょっとどころじゃないぞ。お前、いつから女装趣味にハマってるんだ」

「別に女装じゃないですよ。好きな服が女物だったってだけで、女になりたい願望もなければスカートも履きたくないです」

性自認は男だし、性志向は女。れっきとした人間のオスである。

ただ服の趣味が女物なだけ。

「しかも今夜はルルシーとデートだから、ちょっと派手なくらいが良いと思いまして」

「誰が誰とデートだ」

「ルルシーは俺のこと嫌いですか?」

「好きだけど、そっちの関係になるのはお断りだ」

「あはは。分かってますよ」

俺だってその気は全くない。男とすることはあるけども、それは仕事で、趣味ではない。

何よりルルシーとの関係を、今のままから崩したくはなかった。

「…ルルシーは昔の俺の方が好きでしたか?」

「…何でそんなことを聞く?」

「ルルシーはそうだったんじゃないかと思っただけです」

「馬鹿言え。今の方が余程生き生きしてて、好きだ」

「そうですか」

それが本音なのか、嘘なのか。

どちらでも構わないけど、俺は今更もう、変わることは出来そうになかった。
< 392 / 626 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop