The previous night of the world revolution
『厭世の孤塔』とは、ルティス帝国にある非合法組織の一つである。

組織の規模は『青薔薇連合会』ほどではない。少数精鋭のマフィアだ。

だがそのやり口は凶悪で、小さな組織とはいえ、非合法組織の中では一目置かれる存在だ。

俺達にとっても、敵対するには嬉しくない相手である。

その組織が、近頃『連合会』と敵対する動きを見せている。

「今回の武器庫の襲撃、それに先日の、参加組織への襲撃…一連の事件は、やはり『厭世の孤塔』によるものと思われます」

近頃連日開かれるようになった幹部会議で、アイズは手元の書類に目を落としながら、そう報告した。

さすがのアシュトーリアさんも、最近の会議ではお楽しみを挟まずに、すぐ本題に入っている。

その為、非常に機嫌が宜しくない。

「これによる死者数はこれで24名…。当然ながら、これからも襲撃が続けば更に増えます。早いところ対策をしなければ…」

「その襲撃は、『厭世の孤塔』によるもので確定なの?」

「確証はありません。証拠が掴めている訳ではないですから」

「捕虜は?」

「四、五人捕らえましたが… 尋問の前に、全員自決しました」

随分と徹底していることだ。捕虜全員が自決とは。

全く忌々しいことこの上ないが…。どうせ奴ら、拷問したところで死んでも口を割らない。

そういう訓練を受けているのだ。俺達と同じように。

絶対に組織を、裏切らないように。

「ルレイアの方はどう?」

「『孤塔』に繋がりを持つ人間を何人かたらしこんでみましたが…。やはり確証的な情報にはなりませんでした」

「そう…」

『厭世の孤塔』の直属のメンバーと関係を持てれば良いのだが…。さすがにガードが堅くて、なかなか入り込めない。

仕方ないから、『厭世の孤塔』に関わりを持つ人間から探ってみている。でも、やはり組織の内側の人間でないと、核心的な情報は持っていない。

役に立てなくて誠に不本意であるが…。

「…帝国騎士団との、関連については?」

「…リーフリルに探りを入れてみましたけど、何も知らないとのことです」

この件で厄介なのは、『厭世の孤塔』が帝国騎士団と繋がっている可能性がある、ということなのである。
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