The previous night of the world revolution
「本物のエーデルガルトの居場所は?」

「…居場所は知らされていません」

「あなたのところのボスは、人間のクズみたいな奴なんですね」

部下を矢面に立たせて、自分は安全なところから交渉を持ち掛けるとは。

全く以て、ボスの鑑ではないか。

部下を犠牲に自分の身を守ろうとする賢しさよ。

そんな人間の下についていれば、いずれ身を滅ぼす。

俺はそれを、よく知っている。

「とりあえず、交渉の是非を決めるのは俺ではない。うちのアシュトーリアさんに繋いであげますから、あなた方の生死はアシュトーリアさんに託します。ただ…」

「…」

「…生きて帰れるとは、あんまり思わない方が良いですよ」

用が済むまでは、多分生かしてもらえるけど。

その後は…。

…まぁ、俺には知ったことじゃないが。

「よし、それじゃあ撤退しますか」

「…お前は、一緒に来てもらうぞ」

ルルシーに引っ立てられた影武者は、抵抗をしなかった。

最上階に上がってくる俺達を止められなかったのだから、もう彼らに勝ち目はない。

幹部である俺達を止めることが出来たなら、まだ勝機はあったろうが。

ここで死ねた者は、まだ幸せだ。

少なくとも、苦しまずに殺してもらえたのだから。

でも生き残った者は…これから、どんな目に遭わされることやら。

「…あ、そうだルルシー」

「何だ?」

「…俺、MVPになるチャンスがなかった」

「…まだこだわってたのか…」

俺のMVPへの道は、儚く消え失せたのだった。
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