The previous night of the world revolution
ーーーーーその頃、帝国騎士団では。

こちらも、なかなかの修羅場を迎えていた。



「クリュセイス家のご令嬢が『厭世の孤塔』をけしかけて『青薔薇連合会』を攻撃したってのは、本当なのか?」

相変わらず馬鹿みたいに開いている週一の隊長会議で、議論に上がっているのはやはりその話題であった。

「あぁ、調べがついた。本当のことのようだ」

「何だってそんなことするんだ?」

「国の為を思っての善意の行動だったそうだ。『連合会』は帝国に害悪だからなくした方が良い、と」

オルタンスが淡々と答えると、アドルファスは相変わらずはっきりと、しかし真実を言った。

「余計なことすんじゃねぇよ、ったく…」

「アドルファス殿。クリュセイス家の方に向かって…」

「事実だろうが。善意だろうが何だろうが、帝国騎士団の名を使って余計なことしてくれたことに変わりはない」

ばっさりと切り捨てるアドルファスは、案外今の俺とは気が合うのかもしれない。

確かに口は悪いが、言ってることは事実なのだ。

「お陰で『連合会』と敵対する形で揉め事を起こしちまった。最悪だろ」

帝国騎士団にとっても、俺達は正面切って敵対したい相手ではない。

『青薔薇連合会』と騎士団はルティス帝国の陰と陽。どちらが壊滅しても、ルティス帝国はお仕舞いだ。

「…『青薔薇連合会』は何と?」

その重大さが分かっているのだろう。さすがの隊長連も、俺達の出方には警戒しているようだった。

「今朝、連絡が届いた。アシュトーリア・ヴァルレンシーが…直接話し合いの場を持ちたい、と」

「…話し合い…」

「お互い何か誤解と行き違いがあるようだから、話し合って、平和的に和解を申し入れたいそうだ」

アシュトーリアさんは俺達幹部組から報告を受けて、帝国騎士団と直談判することに決め。

その申し入れを、オルタンスに直接したのだ。

「平和的に…ねぇ。だいぶ吹っ掛けられるぞ」

「だろうな」

和解の話し合い、はあくまで口実だ。

今回の件で非があるのは、我々の均衡を崩したクリュセイス家の馬鹿女。そしてそれはイコール、帝国騎士団に繋がる。

そして俺達は、その馬鹿な騎士団によって損害を受けた被害者。

つまりこの話し合いは。

…言うべきことは分かってるな?という会合だ。

こちらが下手に出る必要は全くないし、むしろ高圧的に挑むつもりだ。

「アシュトーリア本人が出てくるのか?」

「あぁ。それと、部下が数名だそうだ」

「…向こうもなかなか本気らしいな」

『青薔薇連合会』の首領本人が出てくる。

これで帝国騎士団の連中も、対応を少しでも間違えば首が飛ぶことは理解しただろう。

「…気は進まないが、ひたすら頭を下げる他なさそうだな」

「…」

まさかこの時点では、帝国騎士団の連中は、誰一人予想していなかったことだろう。

その会合で、かつての同僚と再会することになろう、とは。
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