The previous night of the world revolution
…アシュトーリアさんの執務室から出た後。

今度はルルシーが、心配そうに声をかけてきた。

「…本当に良いのか?お前…」

「ルルシーまで。俺はどんだけ弱虫だと思われてるんですか?」

「弱虫とか、そんなんじゃない。分かってるだろ」

「…」

ルルシーの顔は真剣そのもので、アシュトーリアさん以上に俺を心配しているようだった。

…そんな顔されると、俺も困るのだけど。

「別に、虚勢じゃないですよ。本当に平気ですから」

「…ルシェにも会うことになるかもしれないんだぞ」

ルルシーは、そのとき初めて姉の名前を出した。

今まで、まるでその話題を避けるかのように…姉のことは口にしなかったのに。

…本当に、心配性だなぁ。ルルシーは。

「もう騎士団にもウィスタリアにも、未練はありませんよ。あるのは、復讐心だけです」

「…」

「心配してくれてありがとうございます。でも本当に大丈夫ですから。むしろ…楽しみなくらいなんですよ」

これは本心だ。ようやくあのオルタンスの澄ました顔が険しく歪む様を見られるかと思うと、楽しみで夜も眠れそうにないくらいなのだ。

「…分かった。それなら良いけど…」

「あぁ、それとルルシー。当日は俺、ふざける感じで行きますけど良いですよね?」

「普段通りってことだろ?」

心外だ。俺ほど普段から真面目に物事に取り組んでいる人間はいないと思っていたのに。

「ふざけても何でも良いが、終わった後にしんどくなって倒れるようなのはやめてくれよ」

「そのときはルルシー。膝枕してくださいね」

「願い下げだ」

そんなこと言って、俺が本当に頼んだらやってくれるの、知ってるんですからね?

ルルシーは基本的に、俺には甘いからな。
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