The previous night of the world revolution
遅刻したんだからもう少し大人しく入ってくれば良いものを。

ルレイアはわざと注目を浴びるように、堂々と派手に登場した。

まぁ…その気持ちはちょっと、分かるけど。

そしてまた、こういう厳粛な場ではそれなりに礼装してくれば良いものを。

いつも通りの…派手な格好であった。

むしろ派手さを増している。

いつもの黒ずくめの上下に、女物の黒いサンダル。

左手にはいつもよりチャーム増し増しのリングブレスレット。

おまけに今日はサンダルだからか、お揃いのアンクレットまでついている。

ピアスはいつも通りの黒い蝶。首には黒いチョーカー。

ハーフアップにまとめた髪には、リングブレスレットとお揃いの、黒の蝶がとまっているような髪飾り。

今日は化粧まで黒でまとめたらしく、目元は黒のアイラインで目力を強調していた。

全身黒ずくめなのに、胸元の薔薇のブローチだけが青で、それがまた目を引いた。

…派手にも程があるぞ。こいつ。

もしかしたら格好が奇抜過ぎて、帝国騎士団の連中もルレイアがルシファーであることに気がつかないのではないかと危惧したが。

隊長達は変わり果てた同僚の姿を見て、皆愕然としていた。

オルタンスだけが、目を細めて険しい顔をした。

…まぁ、そりゃ気づくだろうな。

服の趣味が変わっても、ルレイアが全身から漂わせる高貴な雰囲気は消せないのだから。

「…いやはや、遅刻して誠に申し訳ないですねぇ」

人々の視線を一身に受けながら、ルレイアはへらへらと笑ってみせた。

「お前…何処行ってたんだ?」

一応遅刻の理由を尋ねてみる。体調不良で、とか渋滞で、とかならまだ許容範囲だが。

「え?ネイルサロン」

論外な理由だった。

「お前な、何でこんなときにネイルサロンなんか…」

「だって予約してたんだもん」

お前、絶対わざとだろ。

それとも定期予約なのか?

「それより見てくださいよ今日のネイル!凄いでしょ?綺麗でしょ?」

「…派手だな…」

黒い薔薇と蝶がお気に入りなのか、黒薔薇と黒蝶を模した複雑なネイルアートが十本の指に施されていた。

それだけじゃない。今日はサンダルなので、足にまで似たようなネイルをしていた。

しかも今日は、香水まできつめだ。室内にふわりと妖艶な香りが漂っている。

「お前はな、もう少しTPOを弁えた格好を…」

「これが俺の礼装ですよ?」

礼装とは一体何なのか。

せめてその派手な髪飾りだけは何とか…と思ったのだが。

「うぉぉ、ルレ公すげぇ。爪めっちゃ綺麗じゃーん!」

アリューシャがルレイアをそうやっておだてるから、ますます図に乗る。
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