The previous night of the world revolution
今日だけで、帝国騎士団はバッドニュースのフルコースだなぁ。

「ルキハ…だと?」

もう忘れかけていた自分の元部下の名前を聞いて、ウィルヘルミナは目を見開く。

一番気の毒なのは彼女だな。裏切り者は二人共、彼女に近いところにいた人間だった。

彼女は何も悪くはないというのに。お気の毒様。

「軽く調べてみたが、あいつ、丁度帝国騎士団内でスパイが問題になってた時期の直後に、病気を理由に退役したらしいな」

「恐らく…あの男がスパイだったのだろうな」

「まんまと逃げられたって訳だ。ルシファーが『青薔薇連合会』に寝返ったのは恐らくそいつの影響だな」

全くもってその通り、と言いたいところだが…実際そうでもない。

ルルシーがいなくても、復讐心さえ宿していれば、俺はどうやってでも帝国騎士団と敵対しただろう。

まぁでも、ルルシーがいなかったらそもそも俺はとっくに自殺してたんだろうけど?

「そんな…」

自分の元部下、更に元ビジネスパートナーだった人間が二人してマフィアにいると聞いて、ウィルヘルミナは青い顔で俯いた。

ルルシーがスパイだったことを見抜けなかったのは、確かに彼女の落ち度でもあるのだろうが。

しかし。

「気にするな。ルキハが本当にスパイだったとしても、『青薔薇連合会』所属なら、どのみちそう簡単には手が出せなかっただろう。それに…ルシファーが寝返ったのは彼が帝国騎士団を追放されて以降だから、貴殿には関係ない」

オルタンスはウィルヘルミナに向かって、慰めるようなことを言った。

それでもウィルヘルミナは、悔しそうに唇を噛み締めていた。

「とにかく厄介なのはルキハとかいう奴より、ルシファーだ。あいつが一番面倒だ」

ルルシーの方に流れかけた話題を、アドルファスが戻した。

本当に、うんざりしたような表情であった。
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