The previous night of the world revolution
「帝国騎士団にいた頃は、オルタンスやルシェみたいな化け物の影に隠れて見えなかっただけだ。正直、人をまとめ、人を使う才能に関しては、俺より上だと思うぞ」

「…」

アドルファスはきっぱりとそれを認めた。

帝国騎士団にいた頃、俺がカリスマ性を発揮しなかったのは、オルタンスと姉がいたから。

俺より更に化け物じみた才能がある人間が二人も上にいたから、その必要がなかっただけ。

そして今、その二人がいなくなったからには。

俺は存分に、才能を発揮出来るという訳だ。

「…随分あの男を評価するな」

「皆少なからず分かってることだろ。あいつは新卒ですぐに隊長に任命された。それだけの実力はある訳だ」

隊長達は、皆、俺を見下していた。

女王陛下を暗殺しようとして身を滅ぼした、愚か者だと。

けれど、それを差し引けば。

それなりの才能があることは、皆認めていたのだ。

「…確かに、彼は若いながらに肝が据わっていたからな…。『青薔薇連合会』にあっても、かなりの戦力になるだろう」

実際にマフィアに入った俺の姿を見たリーヴァは、アドルファスに同意するように頷いた。

「行動力も人一倍ある。それに…ルキハというのは、彼の私的な友人だったのだろう?ルシファー殿は『青薔薇連合会』にあってはまだ新参だろうが…。元からメンバーだったルキハ殿とのパイプがあるなら、組織に馴染むのもそう難しくはない」

リーヴァの言う通りである。

幹部たるルルシーの友人、というだけで、ある程度俺の人望は保証されていた。

「…まさか、彼がマフィアにいるとは…」

「…」

『青薔薇連合会』との交渉自体は、特に問題もなくクリア出来た。

けれどもそれ以上に重い枷を、彼らは課せられたのだ。

これほど愉快なことが、他にあるだろうか?
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