The previous night of the world revolution
「ほら、ルレイア。飲め」

ようやく吐き気が収まってきた頃。

ルルシーは、砂糖と塩を混ぜて作った経口補水液のコップを差し出してくれた。

「んん…」

「ゆっくり飲めよ」

「…はい…」

ルルシーの経口補水液が、身体に染み渡るようだった。

あぁ、命の危機を脱した。危ないところだった。

「それで?お前ら何やってたんだ」

俺がほっと一息ついたところで、ルルシーが尋ねた。

「…」

「…」

俺もだが、シュノさんもなかなかに答えにくい質問である。

「そもそもあれは何なんだ。毒か?」

シュノさんの手料理、毒扱い。

ルルシーもまさか、あれが食べ物だとは思ってなかろうな。

だからルルシーは、さっきから懐疑的なのである。何故自ら毒を食らうようなことをするのかと。

違うのである。あれは毒などではないのである。

…多分。

「あれ何なんだ、ルレイア」

答えたくはない。シュノさんの名誉の為にも、答えなくはないが…。

…しかし、答えない訳にもいかなかった。

「…シュノさんの、手料理です」

「…え」

「シュノさんお手製の、料理です」

「…」

お願いだから、こいつ頭大丈夫か、みたいな目で見ないでください。

泣きたくなってくる。

ルルシーは、しばし俺を、そしてテーブルの上の毒(シュノさんの手料理)を、最後にシュノさんを順番に見つめ。

「…お前ら、何なんだ…?」

出てきた言葉は、それであった。

そんなの、俺が聞きたいくらいである。

「これ…これが料理だと…?」

人並み以上に料理は出来るルルシー。彼には、シュノさんが作ったそれが、食べ物だと信じられないようだった。

「シュノ、一体何をどうやったらこうなるんだ。まさかルレイアを毒殺するつもりじゃなかったんだろう?これは事故か?」

「毒殺なんてしない。でも…その…」

「そもそもこれは、何なんだ?何を作ろうとしてこうなった?原材料は何だ?」

「…ポテトサラダ…」

シュノさんは、消え入りそうな声で答えた。

これ、ポテトサラダだったのか。全然気がつかなかったし、これでポテトサラダだと気づけたらその人は神だ。

こんなの、俺の知ってるポテトサラダじゃない。

そもそも色が緑。これにはポテサラーズもびっくりである。

「ルレイア、いつもポテトサラダのお話ししてるから…好きなのかと思って…」

「ポテトサラダの話と言うよりは…『ポテサラーズ』の話だと思うがな…」

そうか。俺がいつも『ポテサラーズ』について語っていたから、わざわざポテトサラダを作ってくれたのか。

非常にいじらしくて可愛いが、食べられるものを出して欲しかった。

「ということは…これ、原材料は主にじゃがいもか…?」

「うん…」

「…」

どうやったら、じゃがいもからこんなスライムを作れるのか。

やはりシュノさんは、錬金術師なんじゃないかと思う。
< 464 / 626 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop