The previous night of the world revolution
これには、ルルシーも絶句であった。

これがどうやったら、ポテトサラダだと認識出来るんだ…とでも言いたそうだ。

確かに。俺も全く気づけなかった。

気づける人がいるのか。原型を留めてないぞ。

「…シュノは、料理…したことあるのか?」

ルルシーは、根本的な質問をした。

俺が知りたいのは、シュノさんがこれを「成功作」として作ったのか、それとも「失敗作」と分かっているのか、この点である。

もしこれが「失敗作」だと分かっていて、それでもワンチャンあるかなと思って出したのなら、まだ救いはある。

自分が料理下手くそだって自覚があるということだから。

でももしこれを「成功作」として自信満々で出したのだとしたら…ルティス帝国の未来はない。

シュノさんは壊滅的かつ破壊的な味覚の持ち主ということになる。

願わくば、ただ料理が下手なだけでありますように。

「…ない…」

消え入りそうな声で、シュノさんは答えた。

あ、やっぱりないのか。

つまり、ただ料理が下手なだけなんだな。

「作ったことないのに作ったのか?」

「…うん…」

このゲロマズポテトサラダが、シュノさんが作った初めての手料理と。そういうことだな。

成程。そう考えると…微笑ましいかもしれない。初めての目玉焼き、ちょっと焦がしちゃった…みたいな。

まぁ、目玉焼きちょっと焦がした程度の失敗じゃ済まなかったけど。

それどころか俺は命の危険を感じた。

ルルシーが来てくれなかったら、今頃俺は、安らかな顔で眠っていたと思う。

「…何でまたそんなことを?」

出来もしないのに何故またチャレンジしたんだ、とルルシーは少し呆れていた。

「…ルレイアに、お礼がしたくて…」

「…」

気持ちは凄く有り難いのだけど、随分過激なお礼だ。

「それで、作ってみたのか?」

「うん…」

「作ったことなかったのに?」

「レシピ見て作れば出来るかなって…」

「…」

もしかして、そのレシピが元凶なんじゃないかな。

シュノさんはレシピに忠実に従っただけで、もしかしてそのレシピは、料理本を装った化学兵器の合成書なのではなかろうか。

…ないだろうなぁ。

シュノさんは…こんなことを言いたくはないが、自分の手先が人より不器用だってことを、自覚するべきだ。

いや、多少の自覚はあるのだろうけど…。そこまで酷くないと思っているようだ。

自分の予想以上に自分が不器用なんて、そりゃ認めたくはないよなぁ…。
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