The previous night of the world revolution
シュノは、俺にとって大事な家族である。

確かに彼女は少し苦手意識があるが、それでも命を懸けて守るべき大事な仲間であることに変わりない。

けれども、今ばかりは。

ルレイアを半殺しにされたこともある。今これを許していたら、更なる犠牲者を生む可能性もある。

と言うか、一番やばいのはルレイアだ。

俺には、ルレイアを守る義務があるのだ。

ここは、やはり心を鬼にするべきであろう。

許してくれ。これも愛の鞭という奴だ。愛があるからこそ、厳しくもなるのだ。

「…シュノ。はっきり言っておくぞ」

「…なぁに?」

「今のお前に、アレンジなんてする資格はない」

「…」

…言った。言ってしまったぞ俺。

「アレンジというのはな、基本をしっかり押さえた者が、その基本を更に応用することであって。そもそもまだ基本が出来ていないお前には、アレンジは許されない」

別に許されない訳でもないし、元々料理が上手な人なら、基本のメニューを作ったことがなくてもアレンジしても良いが。

ここは、はっきり言っておくべきだ。

「まずは基本だ。基本が出来るようになったら、鯖味噌でもイチゴジャムでも入れれば良い」

まぁ、それが美味しいと思うなら、だがな。

俺はやってみたことはないが…多分美味しくはならないと思うんだ。

鯖味噌は是非、鯖味噌のまま食べたい。

イチゴジャムは、トーストにつけて食べたい。

決してポテトサラダに入れるべきものではないと思うんだ。

それとも、やりようによっては美味しくなるのか?最早錬金術の次元だな。

しかしシュノは、きょとんと首を傾げて持論を展開した。

「…でも、カレーは色んなものを色々入れると美味しくなるって言うでしょう?ポテトサラダも材料はあんまり変わらないんだから、色々入れたら美味しくなるんじゃないの?」

「…確かに…」

なんだか、真っ当な意見だな。一理あると思わされたぞ。

いや待て。何を絆されている。

「違うぞシュノ。カレーとポテトサラダは違う。確かに色々入れて美味しくなることはあるが、初心者がやるのは危険だ」

「そうなの…?」

シュノはきょとん、と首を傾げた。

危な…。そんなことすら知らずに挑戦しようとしていたのか。ルレイアが死にかける訳だ。

いや、まぁ今気づけたのだから良しとしよう。

「このイチゴジャムその他は、別の料理で使おう。ポテトサラダは基本的な材料で作ろう。な?」

「分かった」

こくり、と頷く。なかなかに素直だな。

俺はもっと、こう…シュノは融通が利かない奴だと思っていたのだが。

だから、料理を教えるのも難儀するだろうと覚悟していたのだが…。

…意外と素直なんだな。

シュノさん良い人ですよ、とルレイアが言っていたのを思い出す。

とはいえ、ルレイアは今回シュノに半殺しにされたからな…。今後も彼女を「良い人」と言うかは疑問である。
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