The previous night of the world revolution
あまりの感動に、俺は半泣きであった。

めちゃくちゃ美味しい訳ではない。人参は生煮えなのかちょっと固いし、きゅうりは塩が強いし、ハムは切り方が甘くて繋がってしまってるが。

それがどうした。だって、食べられるのだ。身体が拒否しないのだ。ちゃんと食べ物だと認識出来るのだ。

素晴らしい進歩ではないか。

「シュノさん、あなたは天才です。才能の塊です。素晴らしい。ルティス帝国の未来は明るいですよ」

シュノさんの両手を取って、涙ぐみながら言うと、シュノさんも嬉しそうであった。

「良かった…」

それなのに、シュノさんのポテトサラダを横から突っついたアリューシャが水を差した。

「え?そんなに美味くなくね?人参硬過ぎだし…」

「愚か者!」

何を余計なことを、と俺は片手に持っていたフォークでアリューシャの頭をぶっ叩いた(縦でじゃないよ。横でだよ)。

「いってぇ!」

「貴様には分からんのだ。シュノさんのこの成長ぶりが!両生類が一夜にして人間に進化したかのような革命的進歩だぞ!敬え!」

「へ、へい。すんません…」

俺のあまりの剣幕に、アリューシャは目を白黒させながらすごすご引き下がった。

「…美味しくない?」

ほら見ろ。アリューシャが余計なことを言うから、シュノさんはまた不安そうな顔になってしまった。

「そんなことない。ちゃんと美味しいですよ」

「そう…?」

そこで、アイズがフォローを入れてくれた。

「初心者でこれくらい作れたら上等じゃないかな。確かに百点満点ではないけど、伸び代は充分あると思うよ」

そう。そういう言い方をしよう。

人間、モチベーションを保つのが成長の源だ。

「これからもっと上手くなれますよ、シュノさん」

「うん。ありがとう…」

もくもくとポテトサラダを口にする俺を見て、シュノさんはとても満足そうだった。
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