The previous night of the world revolution
「しっかし、アイ公は出張ばっかだよなー」

「仕方ないだろう。アイズは実質、『青薔薇連合会』のナンバーツーだからな」

その日。アイズが出張に発つ前日の夜。

幹部組は相変わらず、ルルシー宅で夕飯を集っていた。

最近はシュノさんも一緒で、何かしらおかずを作って持ってきてくれる。

食べるのは主に俺だけだが。

彼女の料理の腕は、日進月歩で上手くなっている。

「しかもまたアシスファルト。アイ公、お土産宜しくな」

「はいはい。何買ってくれば良いの?」

「なんか美味いもん」

「分かった」

アシスファルトと言うと、名産は砂糖や宝石だったな。

アイズも律儀にお土産買ってくるんだから、良い人だ。

「お土産も良いが、気を付けろよ。アシスファルトの裏社会は今、きな臭い話で持ちきりらしいからな」

「そうだね」

ルルシーの忠告に、アイズは素直に頷いた。

今回のアイズの出張の目的は、アシスファルト帝国にある『連合会』支部と、アシスファルト帝国の非合法組織、その対立を収めることである。

現在アシスファルト帝国の裏社会は荒れており、あちこちでいさかいが起こっているそうな。

そのいさかいに、『連合会』支部も巻き込まれつつある、と。

アシスファルトにあるうちの組織は、ルティス帝国の『青薔薇連合会』本部ほどは大きくない。

このままでは向こうの組織に取り込まれてしまう恐れがあり、それをなんとか収めてくれないかとヘルプが来た。

仲間は決して見捨てない、が『青薔薇連合会』の信条。アシュトーリアさんは二つ返事で了解し、アイズレンシアを派遣することに決めた。

とはいえ、気は進まないらしく、行かせたくない行かせたくない、と最後までぶつぶつ言っていた。

アイズを心から信用しているのは確かなのだが、それだけに彼を送り出すのが寂しいのだ。

アシュトーリアさんも相変わらずだ。

「つってもまぁ、アイ公なら大丈夫だろ~」

アリューシャは楽観的にそう言ったし、俺もそう思っていた。

ルルシーも心配こそしていたものの、大丈夫だろうと思っていただろうし。

シュノさんも同様だったはずだ。

アイズレンシアは優秀だ。アシュトーリアが一番の信頼を寄せるほどに。

だから何事もないと。いさかいを収めて、お土産片手に、平気な顔で無事に帰ってくると。

そう、信じていた。
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