The previous night of the world revolution
ーーーーーその頃、帝国騎士団では。



「…『青薔薇連合会』が、アシスファルト帝国に進出しようとしています」

『青薔薇連合会』。

その名前を聞いただけで、帝国騎士団の名だたる隊長達は、気分が悪くなるようだった。

それもそのはず。ただでさえ厄介な非合法組織に、今はかつての同僚がいるのだから。

そりゃあ、厄介なことこの上なかろうなぁ。自業自得だけど。

「元々アシスファルト帝国にも、『青薔薇連合会』の支部はありましたが…。近頃は更にその勢力を拡大しているようです」

『SiV』との一悶着が落ち着いた頃、アシュトーリアさんは本格的に、『青薔薇連合会』アシスファルト支部を再建した。

しかも、以前より規模を拡大して、だ。

ウィンクロース家というバックがついた今、新しくなった『青薔薇連合会』アシスファルト支部に手を出すのは容易ではなかった。

このまま順調に行けば、『青薔薇連合会』は、アシスファルト帝国においても覇権を握るかもしれないな。

そうなれば、最早ウィンクロース家の後ろ楯など必要ない。

シャリヤには、それまで精々、俺の手足になってもらうとしよう。

さて、それはさておき。

もしそうなった場合、帝国騎士団としてはあまり面白くなかった。

それまで拮抗していた騎士団と『青薔薇連合会』の天秤が、こちらに傾いてしまいかねない。

「このまま野放しにしておけば、奴らは帝国騎士団にも仇を為す存在になりかねません。そろそろ何か、対策を考えた方が良いと思います」

…ところで。

隊長会議を行うこの広い会議室で、最も若くて最も任期が短いにも関わらず、年上の人間にも堂々と意見するこの男は、何者なのか。

俺は知らない人間だった。彼も俺を知らないが。それも当然。

その男こそ、俺の後釜。俺の二世。

帝国騎士官学校を卒業してすぐ、四番隊隊長に任命された天才であった。

名前は、ルーシッド・デルマ・スヴェトラーナ。

ウィスタリア家と並ぶ名家、スヴェトラーナ家の秘蔵っ子である。
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