The previous night of the world revolution
折角街に出てきたんだから、ルルシーに何かお土産でも買おうか、と思っていたとき。

「あら?あなた…」

「?」

背中で声がして、振り向くと、そこには。

随分と、懐かしい人がいた。

記憶を手繰り、彼女の名前を思い出す。

そうだ、この人は、確か…。

「…あなた…ルシアナさん?」

「えぇ、久し振り」

覚えているだろうか。ルシアナ・アークトゥルス。

帝国騎士団にいた頃、俺は八番隊隊長のウィルヘルミナと共に、女性の権利活動をしていた。

ルシアナは、ウィルヘルミナの私的な友人であり、そしてルティス帝国における女性権利活動の第一人者である。

活動を通して、俺とも交流があった人だ。

俺が騎士団をやめてからは、当然会うこともなかったが。

まさか、こんなところで再会するとは。

ルティス帝国も狭いもんだな。

「奇遇ですね。ショッピングですか?」

「えぇ、少し。あなたは?」

「俺もです」

今着てるこの服を買ってきました。

「帝国騎士団を、やめられたと聞いたけれど…」

「…えぇ、まぁ色々ありましてね」

そう言うしかない。まさか本当のことを言っても仕方ないし。

俺は自分の過去を憎んでいるから、あまり過去の自分を知る人間とは付き合いたくない。

適当に挨拶だけして去ろうと思っていたが、ふと脳裏に、一つの考えが浮かんだ。

…そうだ。

…ちょっと、良いこと思い付いた。

着ている服の色は違えども、そのときの俺は、マフィアの黒であった。

「本当に、懐かしいですね。時間があるなら、少し話しませんか?」

「えぇ、勿論。私も思い出話をしたいわ」

この時点で、彼女は俺の巣に引っ掛かったようなものだった。
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