The previous night of the world revolution
まぁ、これをデートと呼んで良いのかは甚だ疑問ではあるけれども。

「わぁ~。いっぱいある」

電車に揺られて辿り着いた、大型のペット用品専門店。

そこの小動物エリアで、シュノさんは大はしゃぎであった。

「どれが良いかな。ルーちゃん、どれが好きだと思う?」

少女のような笑顔で俺に振り向くシュノさんは、とても世間を脅かす『青薔薇連合会』の幹部とは思えない無邪気さだ。

「回し車とか、トンネルが好きだそうですよ」

先日、ちゃんと調べてきた。

ハリネズミの好きな遊び道具が何なのか。

「回し車…?ハムスターみたいな?」

「えぇ、ハムスターみたいな」

「…でも、ハリネズミはモグラなんでしょ?モグラも回し車で遊ぶの?」

「遊ぶみたいですよ。むしろ夢中になるとか」

「へぇ~」

図らずも、またハリネズミの生態に詳しくなってしまった。

ハリネズミを飼うマフィアなんて、俺達くらいだろうなぁ。

いや、もとはシュノさんの部下が飼ってたんだから。

「じゃあおっきいの買おう!」

「おっきいのって…。ケージに入らなきゃ意味ないですよ?それに、トンネルも買ってあげたいですし」

あの子達モグラだから、トンネルみたいな暗いところは好きだそうだ。

「真っ直ぐなトンネルじゃ飽きちゃうかな…。カーブするトンネルにする?」

一口にトンネルと言っても、色んな種類があるからな。

とりあえず、ハリネズミが通れるくらいのサイズを選ぶとして。

「交差点があるのもありますよ」

東西南北から入れる。楽しそう。

「交差点…危なくない?」

「ルーさんしか通らないから危なくはないでしょう」

交差点は事故の温床ではあるが、生憎この交差点を利用するのはルーさんだけ。

となれば交通事故もあるまい。

「それに、入ったが最後迷子になっちゃわないかな…」

「そこまで馬鹿じゃないと思いますけど…」

「…じゃあ、カーブと交差点、両方買って良い?」

良いですよ。

ルーさんが飽きてきたら、入れ換えれば良い。

結局シュノさんは、回し車を一つと、トンネルを二つ、ルーさんの為に購入した。

俺が払いますよと言ったのだけど、聞き入れてもらえなかった。

女性に払わせるってお前、どうなのよ、と言われそうだが…。

…昼食で奢ろう。よし、そうしよう。
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