The previous night of the world revolution
こうなれば、他の隊長達も、僕の言葉に耳を貸さざるを得ない。
二人の名前入りの企画書を出すと、さすがの隊長達も頭から否定することは出来なかった。
「…」
帝国騎士団創始800年の記念式典。その開催を翌月に控えた隊長会議の折。
僕が提出した企画書を前に、隊長達は渋い顔をしていた。
またこの件か、とでも言いたそうな顔だ。
「…またかよ」
案の定、嫌味っぽくなるのを隠しもせずにアドルファスが言った。
「何度出してくれば気が済むんだ」
「この国から非合法組織が全てなくなったら、です」
そんな日が来るはずがない、と言いたいのだろう。
でも、どんなに遠い道のりでも、一歩を踏み出さなければ前には進まないのだ。
「今回は、クリュセイス家当主の妹君と、王妹殿下からも推薦を頂いています」
書類に彼女達のサインが入っているのだから、見れば分かることと思うが。
「充分考慮に値する内容だと思いますが…」
今回僕が考えてきたのは、まずマフィアの自由を奪う為の法案だ。
『青薔薇連合会』以下全ての非合法組織を帝国政府の管理下に置き、何をするにもまず、こちらにお伺いを立てなければならない。
こうすることで、マフィアの手足を縛る。
そうすれば、奴らは必然的に弱っていく。
そして弱ったところを根こそぎ叩く。
これが成功するまでには、長い時間がかかるだろう。一筋縄でも行かないだろう。
でも、誰かが始めなければ。
「…あまりにも無謀だろ、これ」
アドルファスは、有り得ない、とでも言うように企画書を放り投げた。
「机上の空論も良いところだ。マフィアを管理下にって、あいつらが唯々諾々と従ってくれると思ってるのか?反発するに決まってるだろ」
「ですから、企画書にも書いてあるように、その反発を収める為にマフィアに出資する企業に圧力を…」
「百歩譲ってそれが成功したとしよう。実際、強引でもやろうと思えば、ほとんどの非合法組織はそれで縛れる。でも『青薔薇連合会』は無理だ。あいつらには手は出せない」
また、『青薔薇連合会』。
この国で非合法組織と言えば、イコール彼らだと思って良い。
「『青薔薇連合会』は相当やり手だ。そう簡単に潰されてはくれない」
「分かっています。けれど『青薔薇連合会』だって無敵ではありません。取引相手を徹底的に潰せば、彼らも必然的に弱ります」
商売する相手をなくしてやれば良いのだ。彼らだって、一つの大きな企業なのだから。
そして、組織にとって生命線とも言える、活動資金源を絶ってやれば良い。
しかし、アドルファスは納得出来ないようだった。
無謀なことは分かっている。分かっているけど…やらなければ何も始まらないのだ。
何故、それが分からない。
「…考慮に値する、とは言っておく」
俺の苛立ちを鎮めるように、オルタンスが呟いた。
「オルタンス殿…」
「現実に実行するかどうかは別の話だがな」
…これまでほとんど取り合ってもくれなかった彼が、考えてくれるようになった。
それだけでも、進歩だ。
更に。
「近頃の『青薔薇連合会』の勢力拡大は、脅威的だからな…。こちらも何か対策を取るべきではあるな」
「他のマフィアを潰せば、必然的に『青薔薇連合会』もダメージを負うだろう。それだけでも価値がある」
六番隊のリーヴァ、十番隊のアシタリカが言った。
今までとは違う。手応えがある。
欲を言えば、今日ここで全員の承認を得たかった。そして、来月の式典の日に、堂々とこれを発表したかった。
さすがにそれは叶わなかったが、でも、今は僅かながら希望が見えた。
まずは、それを喜ぶべきだと思った。
二人の名前入りの企画書を出すと、さすがの隊長達も頭から否定することは出来なかった。
「…」
帝国騎士団創始800年の記念式典。その開催を翌月に控えた隊長会議の折。
僕が提出した企画書を前に、隊長達は渋い顔をしていた。
またこの件か、とでも言いたそうな顔だ。
「…またかよ」
案の定、嫌味っぽくなるのを隠しもせずにアドルファスが言った。
「何度出してくれば気が済むんだ」
「この国から非合法組織が全てなくなったら、です」
そんな日が来るはずがない、と言いたいのだろう。
でも、どんなに遠い道のりでも、一歩を踏み出さなければ前には進まないのだ。
「今回は、クリュセイス家当主の妹君と、王妹殿下からも推薦を頂いています」
書類に彼女達のサインが入っているのだから、見れば分かることと思うが。
「充分考慮に値する内容だと思いますが…」
今回僕が考えてきたのは、まずマフィアの自由を奪う為の法案だ。
『青薔薇連合会』以下全ての非合法組織を帝国政府の管理下に置き、何をするにもまず、こちらにお伺いを立てなければならない。
こうすることで、マフィアの手足を縛る。
そうすれば、奴らは必然的に弱っていく。
そして弱ったところを根こそぎ叩く。
これが成功するまでには、長い時間がかかるだろう。一筋縄でも行かないだろう。
でも、誰かが始めなければ。
「…あまりにも無謀だろ、これ」
アドルファスは、有り得ない、とでも言うように企画書を放り投げた。
「机上の空論も良いところだ。マフィアを管理下にって、あいつらが唯々諾々と従ってくれると思ってるのか?反発するに決まってるだろ」
「ですから、企画書にも書いてあるように、その反発を収める為にマフィアに出資する企業に圧力を…」
「百歩譲ってそれが成功したとしよう。実際、強引でもやろうと思えば、ほとんどの非合法組織はそれで縛れる。でも『青薔薇連合会』は無理だ。あいつらには手は出せない」
また、『青薔薇連合会』。
この国で非合法組織と言えば、イコール彼らだと思って良い。
「『青薔薇連合会』は相当やり手だ。そう簡単に潰されてはくれない」
「分かっています。けれど『青薔薇連合会』だって無敵ではありません。取引相手を徹底的に潰せば、彼らも必然的に弱ります」
商売する相手をなくしてやれば良いのだ。彼らだって、一つの大きな企業なのだから。
そして、組織にとって生命線とも言える、活動資金源を絶ってやれば良い。
しかし、アドルファスは納得出来ないようだった。
無謀なことは分かっている。分かっているけど…やらなければ何も始まらないのだ。
何故、それが分からない。
「…考慮に値する、とは言っておく」
俺の苛立ちを鎮めるように、オルタンスが呟いた。
「オルタンス殿…」
「現実に実行するかどうかは別の話だがな」
…これまでほとんど取り合ってもくれなかった彼が、考えてくれるようになった。
それだけでも、進歩だ。
更に。
「近頃の『青薔薇連合会』の勢力拡大は、脅威的だからな…。こちらも何か対策を取るべきではあるな」
「他のマフィアを潰せば、必然的に『青薔薇連合会』もダメージを負うだろう。それだけでも価値がある」
六番隊のリーヴァ、十番隊のアシタリカが言った。
今までとは違う。手応えがある。
欲を言えば、今日ここで全員の承認を得たかった。そして、来月の式典の日に、堂々とこれを発表したかった。
さすがにそれは叶わなかったが、でも、今は僅かながら希望が見えた。
まずは、それを喜ぶべきだと思った。