The previous night of the world revolution
「…良いか、ルレイア。不用心に喧嘩を売るなよ」

会場に向かう道中、ルルシーはジトッ、と俺を睨んだ。

俺の信用のなさは尋常じゃないな。

「そんな、俺をヤンキーか何かのように…」

「帝国騎士団に対しては、お前はヤンキー同然だからな」

確かに。それは否定出来ないな。

だって、奴らは俺の仇なんだから。

友好的に接しろと言う方が無理な話なのだ。

「あんなところで喧嘩しても仕方ないんだから。分かってるな?特にオルタンスとアドルファス。あの辺とは絶対喋るな。見つけても無視しろ」

「目が合ったらさすがに無理じゃないですか?」

「…だから派手な格好をするなと言ったんだ。そんな格好じゃ、目立つなと言う方が無理だ」

そんな、嘆くように言わないで。

「俺だって馬鹿じゃないんだから、ちゃんと弁えますよ。向こうから売られない限りは喧嘩もしませんから」

「売られたら買うのかよ…」

「売られた喧嘩も買わないマフィアがありますか」

帝国騎士団が喧嘩を売ってくるのなら、こちらが頭を下げる必要はない。言い値で買ってやれば良いのだ。

頭を下げた時点で負けも同然なのだから。

「…まぁ、向こうも馬鹿じゃないから、不用意に喧嘩は売ってこないだろうけど…」

「そう願いたいところですけどねー」

俺個人としては喧嘩を売ってくれた方が有り難いのだが、そうすると俺だけではなく『青薔薇連合会』の仲間が被害を被るから、組織的には平穏であるべきだろう。

個人的には正面衝突でも構わないのだけど。

「…お前のその格好を見たら、その気がなくても喧嘩売りたくなるよな…」

ちょっと。ルルシーが横で何か呟いてる。

失礼でしょ。俺に。

何が悪いんだ。最高に格好良いし、香水だってパーティ仕様にちょっときつ目だけれど、それ以外は普通なはず。

…ルルシーの好みとは合致しないだけ。それだけだろう。

うん。そう思おう。

帝国騎士団の猿共はどうせ、人間様の美的センスなんて分からないに決まってるし。

分かる人にだけ、分かってもらえれば良いのだ。
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