The previous night of the world revolution

sideルーシッド

ーーーーー…その人こそが、あちら側の人間なのだと。

僕は、すぐに理解した。

彼らを見つけたのは、本当に偶然だった。挨拶するべき人間がいないかと周囲を見渡したとき、彼の姿が視界に入った。

そして、一瞬にして釘付けになった。

会場の壁際で、誰とも話さず目立たないように装ってはいたが。

この人こそ『青薔薇連合会』の幹部なのだと、すぐに分かった。

一瞬躊躇い、しかし、僕は自分の敵が何者なのか知りたかった。

だから、彼に近づいた。

全身真っ黒の派手な衣装に身を包み、女のように髪を結び、化粧までしているから、最初は女かと思った。

でも、近づいてみて、それが男なのだと分かった。

見た目からして、まともな人間には見えない。

派手な格好をしているし、化粧も薄くはない。近くに寄ると、妖艶な香水の香りが漂ってくる。

そうだというのに、娼館にいる女のような、下品な妖艶さはなかった。

むしろ、逆。

そのたたずまいは、何処までも品格があって、生まれながらの気品のようなものがあった。

派手な格好さえ、彼を引き立てる役目を果たしているように見えた。

一目見ただけで、この人についていこうと思わせる天性のカリスマ性があった。

僕は思わず息を呑んだ。これが、『青薔薇連合会』の幹部。

四番隊隊長ともあろう者が情けない。

人柄なんて関係ない。マフィアというだけで、彼らは僕の敵なのだ。

僕は生唾を飲み込み、堂々と彼らの前に出た。

隣にいる男は彼の部下だろうか?一応、こちらも警戒しておくことにしよう。

「…こんにちは」

声をかけると、二人の男がこちらを見た。

黒い方の男の視線を真っ直ぐに受け、僕は思わず一歩引きそうになった。

それほどに、鋭い…強い意志がこもった目だった。

「…あぁ?誰ですか、あなたは」

僕は帝国騎士団の制服を着ているから、僕が何処の所属の者かは彼らには筒抜けだ。

敵意を込めた声音であるのも当然のこと。

「こら。喧嘩腰やめろ」

「おっと、済みません」

隣の男に諌められ、彼は叱られた子供のように肩をすくめた。

敬語じゃなかった。隣の男は、部下ではないのか?

いや、分からない。『青薔薇連合会』は、図々しくも構成員を全員家族などと呼んでいる。

上下関係があやふやになってもおかしくない。

全く忌々しいことだ。家族なんて甘い言葉を使って、家庭に恵まれなかった若者を組織に取り込もうとしている。『青薔薇連合会』の常套手段だ。

こんな連中に、遠慮などする必要はない。
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