The previous night of the world revolution

sideルルシー

ーーーーーー…全く、あのルレイアの奴。

相変わらずだが、相手が帝国騎士団ともなると、冷静ではいられないな。

まぁ、さっきのは致し方ない。新たな若い人物が四番隊隊長に就任したということは聞いていたが…。まさかあんな風に鉢合わせるとは。

だから派手な格好をするなと何度も言ったのに。あの格好じゃ誰だって二度見、三度見するだろう。

最近、あいつの隣にいると、俺は地味だと思われることが増えている気がするが。

それは俺が地味なのではない。あいつが派手過ぎるのだ。

大体、何処で買うんだよ。あの服は。

派手なだけではなく似合っているのだから恨めしい。

それはともかく、あの新しい四番隊隊長。

随分と、大それたことを理想としているようだ。

俺はルレイアのように帝国騎士団に並々ならぬ恨みがある訳ではない。殊更に彼らを攻撃する物言いをするつもりもない。

けれども、それを差し引いても…彼の言ったことは無謀きわまりない。

ルティス帝国の、『青薔薇連合会』を含む全ての非合法組織を排除する?

何故そこまで非合法組織を目の敵にするのかは知らない。ルレイアが騎士団を憎むように、彼にも非合法組織を憎む理由があるのかもしれない。

そうは言っても、どれほど憎んでいても…一つ残らず根こそぎ排除する、というのはいかがなものか。

そもそも、そんなことが可能なのか。

まぁ、帝国騎士団の組織力なら、やって出来ないこともなかろう。マフィアの全てを壊滅させることが、絶対に不可能とは言わない。

多分、やれば出来るだろう。

ただ、その代わりに彼らは壊滅的な致命傷を負うことになる。

黙ってやられてくれる奴がいるものか。俺達も抵抗する。他の非合法組織もそうするだろう。

『連合会』と正面からかち合えば、騎士団といえどもただでは済むまい。

最悪、両者共倒れだ。そうなればルティス帝国の秩序は塵と消える。

帝国騎士団も、マフィアもいなくなった国で、残された民は隣国に吸収されるか、あるいは別の組織に取り込まれるか…。いずれにしても、明るい未来はない。

それを分かっているのか、あの男は。

分かっていて、入念に準備して、対策を考えて。

その上で言っているのだろうか。

そうだとしても…例え完璧な備えをしていたとしても…この国の裏社会を徹底的に攻撃することによって、どれほど多くの人間が傷つくか。

マフィアを野放しにしておいた方が、まだ犠牲は少なく済むだろうな。

あの青年の主張を、他の隊長達はどのように考えているのだろう。それもまた気になるところだ。

現実主義の隊長達は、きっと彼の主張を退けるだろうが。

元々反社会組織を許さないアストラエアやユリギウスなんかは、彼に賛成かもしれないな。

なまじ、権力がある。発言権もある。影響力もある。

そんな人間が敵に回ると、確かに厄介だな。

これはアシュトーリアさんに報告して、組織をあげて対策を考えるべき案件だ。

そうだというのにあのルレイア、一体何処に行ったのやら。

あいつには、あまりうろうろして欲しくないのだ。

しかもあんな、目立つ格好で。

だってここには…彼が最も会いたくないであろう人間が…。



そう思ったとき、俺の目の前に、彼女が現れた。



< 545 / 626 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop