The previous night of the world revolution
「…お前、『青薔薇連合会』の者だな」

「…」

…まさか。

俺が。俺の方が、会うとは。

いや、むしろ俺だからか?

本人には…とても合わせる顔などないだろうからな。

「…これはこれは。帝国騎士団の副団長ともあろう者が、俺に何の用だ」

彼女の名前は、ルシェ・エリザベート・ウィスタリア。

言わずもがな、ルレイアの実姉だ。

「単なる挨拶回りだ。立場上、賓客をもてなさない訳にはいかない」

「もてなしてる割には随分上から目線だな」

さっきの四番隊隊長は、少なくとも敬語だったぞ。

敬意を示す相手でもない、と。そういうことか?

「それとも、俺に対する恨みか?」

「何故、お前を恨む必要がある?『連合会』は敵だが、個人的な怨恨は…」

「惚けるな。あんたの弟を、マフィアに引き入れたのは俺だと思ってるんだろう?」

騎士官学校時代から、俺とルレイアが友人関係であったことを、ルシェは知っている。

何せ、あの頃の彼女は弟を愛していた。自分の弟が付き合う友人は、彼女もある程度把握していたはず。

俺がかつて、スパイとして帝国騎士団に潜入していたことも、今や彼女も知っていること。

ルシェにとって俺は、可愛い弟を騙し、裏社会に引きずり込んだ悪魔の手先。

そう思われていても不思議ではない。むしろ、そう思われていて当然のはず。

恨みがないなど、有り得ない。

恨まれたところでどうということはないが、腹の中で憎みながら、上っ面だけ友好的に接されるのは気分が悪かった。

ならいっそ、はっきりと恨みをぶつけられた方がましだ。

そう思ったから、俺は敢えてルシェを刺激した。

弟の名前を出せば、彼女は揺れるはずだと思ったから。

実際、彼女は弟と聞いて、表情を変えた。

…酷く、憎しみのこもった目をした。
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