The previous night of the world revolution
母親は、俺が疎ましくてならなかったらしい。

幼い頃、母親に母親らしいことをしてもらった記憶がない。

覚えているのは、酒臭い吐息と、けばけばしい化粧。俺を罵る声。

殴られるときの打擲音。背中にかけられた熱湯の熱さ。

今でも背中には、そのときの火傷の痕が残っている。

とはいえ、俺は生まれて三年ほどしか、母親のもとにはいなかった。

何故かと言うと…母親は俺が三歳くらいのときに、俺を捨てていなくなってしまったからである。

アパートの一室で、俺は母親が帰ってくるのを、鳥の雛のようにじっと待っていた。

でもいつまで待っても、母親は帰ってこなかった。

何日もたって。母親が帰ってくるのをじっと待ち続けて。

飢えと渇きで意識が遠退きかけたとき。

部屋の中に、警察が踏み込んできたのだった。
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