The previous night of the world revolution
「…こんにちは、ウィルヘルミナさん」

「…!」

ウィルヘルミナは俺を見るなり、敵意丸出しの視線を向けてきた。

自分は友人に呼び出されて来たはずなのに、何故お前がいるのか、と言いたそうだな。

「…何で、お前が、ここに…」

まぁ、そりゃそういう反応になるよなぁ。

「俺が呼んでも来てくれないと思ったので…。ルシアナさんに頼んだんです」

「…何故、彼女とまだ繋がりを持ってる?」

それは大いに疑問だろうけど、今はそんなことを説明している暇はない。

「あなたに…話したいことがあるんです。少し、時間をくれませんか」

ウィルヘルミナの質問には答えず、俺は彼女を丸め込もうとした、のだが。

「断る。敵と話すことなど何もない。ましてや、ルシアナを騙してまで私を呼び出して…」

…うん。最もな反応だ。

ウィルヘルミナは、今まで落としてきた女とは違う。

俺が今まで落としてきた女の大半は、心の何処かで少なからず、男性に甘えたい、すがりたい、寄生したいという願望があった。

それは女性特有の弱さであったり、甘えでもあった。本能と言っても良いかもしれない。

人間の本能に生殖が含まれている以上、それは仕方のないことだ。

けれども、ウィルヘルミナは違う。

確かに彼女はメスだ。それは確かだが…しかし彼女は、男に甘えたり、すがったりする必要はない。

帝国騎士団の隊長ともなれば、肉体的にも、精神的にも…経済的にも、彼女は男に甘えるまでもなく、自立している。

現代では女性騎士も年々増えてはいるが、それでも帝国騎士団はまだ男社会だ。体格的に女性の方が弱く作られているのだから、ある意味では仕方のないことなのかもしれないが。

おまけに彼女は、女性の権利運動に被れている。男に依存しない、女性の独立を推進している第一人者でもある。

そりゃあ、落とすのは大変だろう。俺にとって一番やりにくいタイプだ。

けれども、それで諦めると思ったら大きな間違いだ。

くるりと踵を返し、立ち去ろうとするウィルヘルミナの背中に。

俺は、魔法の言葉を投げ掛けた。

「…あなたは本当に、俺がローゼリア女王を殺そうとしたと信じてるんですか?」

彼女はそれを聞き、ぴたりと足を止めた。

鉄壁の要塞にも等しいウィルヘルミナを籠絡するには、これを使うしかない。

案の定、彼女は振り向いた。
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