The previous night of the world revolution
彼女が見せられた「証拠」というのは、間違いなくオルタンスが捏造した嘘っぱちの証拠なのだろうから。
俺も自分が冤罪であるという「証拠」を、捏造しても良いのだけど。
それだと俺がオルタンスと同レベルってことになってしまうからなぁ。
「じゃあまず、真犯人を教えましょう」
「私は『証拠を出せ』と言った。真犯人は後だ」
「それが出せるならこっちも苦労しないんですよ。大体冤罪被せられたのは、弁明出来るだけの材料がないからです」
「…」
やべ、ちょっと強く言い過ぎたかな…。ならもう聞かない、と言われかねない。
しかし、ウィルヘルミナはまだ聞く気があるようだった。
「真犯人は、クリュセイス家の当主です」
「…クリュセイス家の…?」
勿論知っているだろう。あの忌々しい男の名前と顔は。
「当主、ということは…ゼフィランシア卿か。何故あの方が…。あの方は女王陛下の従兄殿だったろう。陛下を暗殺したところで、王位継承権は妹君のアルティシア様より低い。陛下を暗殺する意味がない」
まぁ、知らなきゃそう考えるよなぁ。
ゼフィランシアが犯人だと言われても、彼には動機がない。
信じられないのも無理はないけど。
「ゼフィランシアはローゼリア女王の実の兄なんだそうですよ」
「…何…!?」
この事実が一般に知られていない以上、ゼフィランシアが犯人だとは信じられないだろう。
だから、まずはこの情報を先に提示する。
「…信じられない。何故そんなことが…」
「まぁ、信じがたい話ではありますけどね…。ゼフィランシアは紛れもなく先代の子なんだそうですが、世間的に公表出来る身の上ではなかった」
「…」
こう言えば、彼女も察するだろう。
ウィルヘルミナだって、帝国騎士団の隊長ともなれば。
ベルガモット王家が清廉潔白な血筋だなんて、教科書に書いてあるようなことを鵜呑みにはするまい。
それなりに薄暗い歴史があることは分かっているはず。だから…ゼフィランシアが先王の隠し子であったと聞いても、あながち嘘ではないかもしれないと、そう考える。
実際、嘘じゃないしな。
嘘であったらどんなに良かったかと思うよ。
だが、紛れもなく真実なのだ。
「ゼフィランシアに王位簒奪の意志があったかどうかはさておき、彼は女王を恨んでいた。それが犯行の動機です。彼は俺の目の前で、ローゼリア女王を撃ち殺そうとした」
「そんな…馬鹿なっ…」
「信じませんか?」
「信じるはずがない。大体…それなら何故、貴殿に罪を着せる必要がある?ゼフィランシア卿を処罰すればそれで…」
「それで済むと思いましたか?」
本当にそれで済んだとしたら、こんなことにはなっていないのだ。
「ゼフィランシアが女王の兄だと、世間に知られる訳にはいかない。それだけじゃない。女王はゼフィランシアを庇った。身を呈して自分を守った家臣ではなく、自分を殺しかけた肉親を庇ったんです」
思い出しただけで腸が煮え繰り返る。
あの利己的な女。どうしようもなく救いのない傲慢な女。
他人が自分に尽くすのを当然と信じて疑わない、人間の屑。
あの女が少しでも「正義」というものを知っていたら、俺はこんな汚名を着せられることはなかったのに。
「あの女は、犯人が誰だか知っていながら…そいつを庇い、忠義を尽くした家臣に全ての罪を押し付けたクズなんですよ。自分がどんな人間に尻尾を振っているのか、少しは分かりました?」
「…」
さすがのウィルヘルミナも、これには言葉を失っていた。
質の悪いドッキリを食らった気分だろうな。
当事者である俺には、ドッキリどころの騒ぎじゃないが。
俺も自分が冤罪であるという「証拠」を、捏造しても良いのだけど。
それだと俺がオルタンスと同レベルってことになってしまうからなぁ。
「じゃあまず、真犯人を教えましょう」
「私は『証拠を出せ』と言った。真犯人は後だ」
「それが出せるならこっちも苦労しないんですよ。大体冤罪被せられたのは、弁明出来るだけの材料がないからです」
「…」
やべ、ちょっと強く言い過ぎたかな…。ならもう聞かない、と言われかねない。
しかし、ウィルヘルミナはまだ聞く気があるようだった。
「真犯人は、クリュセイス家の当主です」
「…クリュセイス家の…?」
勿論知っているだろう。あの忌々しい男の名前と顔は。
「当主、ということは…ゼフィランシア卿か。何故あの方が…。あの方は女王陛下の従兄殿だったろう。陛下を暗殺したところで、王位継承権は妹君のアルティシア様より低い。陛下を暗殺する意味がない」
まぁ、知らなきゃそう考えるよなぁ。
ゼフィランシアが犯人だと言われても、彼には動機がない。
信じられないのも無理はないけど。
「ゼフィランシアはローゼリア女王の実の兄なんだそうですよ」
「…何…!?」
この事実が一般に知られていない以上、ゼフィランシアが犯人だとは信じられないだろう。
だから、まずはこの情報を先に提示する。
「…信じられない。何故そんなことが…」
「まぁ、信じがたい話ではありますけどね…。ゼフィランシアは紛れもなく先代の子なんだそうですが、世間的に公表出来る身の上ではなかった」
「…」
こう言えば、彼女も察するだろう。
ウィルヘルミナだって、帝国騎士団の隊長ともなれば。
ベルガモット王家が清廉潔白な血筋だなんて、教科書に書いてあるようなことを鵜呑みにはするまい。
それなりに薄暗い歴史があることは分かっているはず。だから…ゼフィランシアが先王の隠し子であったと聞いても、あながち嘘ではないかもしれないと、そう考える。
実際、嘘じゃないしな。
嘘であったらどんなに良かったかと思うよ。
だが、紛れもなく真実なのだ。
「ゼフィランシアに王位簒奪の意志があったかどうかはさておき、彼は女王を恨んでいた。それが犯行の動機です。彼は俺の目の前で、ローゼリア女王を撃ち殺そうとした」
「そんな…馬鹿なっ…」
「信じませんか?」
「信じるはずがない。大体…それなら何故、貴殿に罪を着せる必要がある?ゼフィランシア卿を処罰すればそれで…」
「それで済むと思いましたか?」
本当にそれで済んだとしたら、こんなことにはなっていないのだ。
「ゼフィランシアが女王の兄だと、世間に知られる訳にはいかない。それだけじゃない。女王はゼフィランシアを庇った。身を呈して自分を守った家臣ではなく、自分を殺しかけた肉親を庇ったんです」
思い出しただけで腸が煮え繰り返る。
あの利己的な女。どうしようもなく救いのない傲慢な女。
他人が自分に尽くすのを当然と信じて疑わない、人間の屑。
あの女が少しでも「正義」というものを知っていたら、俺はこんな汚名を着せられることはなかったのに。
「あの女は、犯人が誰だか知っていながら…そいつを庇い、忠義を尽くした家臣に全ての罪を押し付けたクズなんですよ。自分がどんな人間に尻尾を振っているのか、少しは分かりました?」
「…」
さすがのウィルヘルミナも、これには言葉を失っていた。
質の悪いドッキリを食らった気分だろうな。
当事者である俺には、ドッキリどころの騒ぎじゃないが。