The previous night of the world revolution

sideルルシー

ーーーーーー…俺が作ったサンドイッチをもくもくと食べて、それから俺はルレイアと二人で、またしてもホラーゲームをやらされた。

今回はアイズがいないから、謎解きに苦労した。

何か出てくる度に、ルレイアはいやーんルルシー、とか言いながらくっついてくるし。

フェロモン駄々漏れのときに引っ付いてくるの、本当にやめろよ。

アリューシャの言う通り、バイオテロだ。

しかもゲームの途中で、ルレイアは俺にくっついたまま寝落ちしやがった。

起こすのも可哀想だから、ベッドに運んで、毛布をかけてやった。

全く、間の抜けた寝顔をしやがって。

俺はこいつのせいで、すっかり眠気が飛んでしまったというのに。

…それにしても。

ルレイアは、ウィルヘルミナと寝てきたと言った。

ウィルヘルミナは、全く隙のない女に見えた。

元部下であったとはいて、俺も彼女と会うことはそんなに多くはなかった。

でも、彼女は強い女性だった。男にすがるような弱さもないように見えた。

それなのに、よくもまぁ、落とせたものだ。

ルレイアのハニートラップのテクニックは、天下一品だな。

こいつに、こんな才能があるとは。

ルレイアは間違いなく、『青薔薇連合会』で1、2を争う実力者だ。

『青薔薇連合会』のルレイア・ティシェリーと聞けば、知る者は身震いするだろう。

だが、俺は時々…信じられない、と思うことがある。

彼が本当に、裏社会を轟かすほどの人物であることが。

こんなに若くて、小さくて、弱々しい人間が…。

俺の記憶の中には、まだ、出会った頃のルレイアの姿が残っている。

騎士官学校の学生寮。三階のN室。

そのちっぽけな部屋の中で、彼は虐げられていた。

彼よりも、ずっと弱い人間に。

あの痛々しい姿を、自分の生きる世界に絶望した目を、今でも覚えている。

そして、彼は四番隊隊長に就任した。

帝国騎士の制服を着た彼の姿が、まだ目に浮かぶ。

今思えば、そんなに似合ってなかった気がするが。

彼はあちら側にいるのだろうと思っていた。それで良いと思っていた。ルレイアは、闇に堕ちなくても強く生きていける、と。

でも、そうはならなかった。

精神病院の一室で、魂の抜けたマネキンのように空虚な目をしていた、あの姿を覚えている。

本当に、酷かったな。あの頃は。

もう一生立ち直れないのかと思っていた。

でも、やっぱりそうはならなかった。

昨日まで魂の抜けていた目が、憎しみに染まっていた、あの姿を覚えている。

帝国騎士団への憎しみ、女王への憎しみ。負の感情に染まることで、彼は生きる活力を取り戻した。

全てのルレイアの姿を、俺は今でも覚えている。

どの姿も、彼の本当の姿だ。

これから、どんな姿になっても良い。どれだけ堕ちても良い。

お前が何処に行っても、俺はその隣にいるから。

同情ではない。憐れみでもないし、かつて命を救ってくれたことへの恩返しでもない。

ただ。
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