The previous night of the world revolution
ルシファーには、何の罪もなかったのに。

罪を押し付けたのは、私達なのに。

その上でようやく見つけた彼の居場所を、凶悪だからと消して良いのか。

それが…帝国騎士団の「正義」なのか?

もしそうなら、私は…。

「…ウィルヘルミナ殿?」

心配そうな顔をした六番隊隊長、リーヴァ・ヘルブラッド卿に声をかけられ、私はびくりと身体を震わせた。

「顔色が優れないが…大丈夫か?体調が良くないようなら…」

「…いえ、平気です。進めてください」

しっかり、しなくては。

下手にボロを出して、疑われるようなことになっては、目も当てられない。

真実を、知られる訳にはいかないのだから。

「…私は、このプランに賛成だ」

強引に話を戻すように、アストラエア卿が言った。

五番隊隊長のアストラエア卿は、ルーシッド卿と同じく、非合法組織には批判的な立場を示している。

当然、ルーシッド卿のプランにも賛成する。

「同じく。私も賛成だ」

更に、九番隊のユリギウス殿も。

この二人がルーシッド卿の話に乗ることは分かっていた。

問題は、他の隊長達がどのような立場を示すのかだ。

「…私は反対だな。現実的じゃない」

先程私を気遣ってくれたリーヴァ殿は、やはり反対した。

基本的に、彼は穏健派だ。マフィアに対して快く思っていなくても、だから滅ぼそう、とは思わない。

「特に『連合会』は様々な領域で根が深い。勢力も大きい。対立するのは好ましくないだろう」

「ではヘルブラッド卿は、マフィアという暴力装置を容認すると?」

「そうは言っていない。ただ、気に入らないからそれらの全てをなくしてしまおうという考えは、短絡的に過ぎると言っているんだ」

非難するような視線を向けるルーシッド卿に、リーヴァ殿はそう答えた。

「気に入る、気に入らないは関係ありません。彼らは帝国民の脅威になっている。だから排除しなければならない。それだけです」

「…」

それが短絡的なのだ、と。

リーヴァ殿は言いたかったのだろうが、こんなところで口論をしても仕方ない。彼は黙っていた。

「…俺としては、やめとけ、って言いたいところだな」

今度は。

三番隊のアドルファス殿が、頭の後ろで腕を組んだ格好で言った。
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