The previous night of the world revolution
すぐさま、俺達はアシュトーリアさんに召集された。緊急会議だ。




「…へぇ」

ミルーダが、あの馬鹿女が死んだ、と聞いて。

俺は、相反する二つの感情を抱いた。

一つは、喜びだ。

あいつには借りがあるからな。『厭世の孤塔』をけしかけて、俺達を攻撃してくれた、あの事件はまだ記憶に新しい。

その癖使用人に全てを押し付け、 自分は地方でのうのうと暮らしていた。

死ねば良いと思っていたけど、本当に死んだとは。

更に、もう一つの感情。

苛立ちだ。

…これは、面倒なことになった。

「…恐れていたことが起きましたね」

苦虫を噛み潰したような顔で、アイズレンシアが言った。

全くだ。いや、俺は恐れてはいないが。起きなければ良いと思っていたことが、起きてしまった。

これは、充分引き金になり得る。

「ミルーダを殺したのは、『厭世の孤塔』の残党だそうです。大方、以前騙されたことへの報復でしょうが…」

まぁ、そうだろうな。

これはミルーダの自業自得だ。

自分に協力して『連合会』を攻撃すれば、『連合会』の権益をそのまま授ける、と。『厭世の孤塔』をそうけしかけて、俺達を攻撃させた。

結局は全部おじゃんになって、ミルーダは逃げ、『孤塔』だけが被害を被った。

そりゃあ『孤塔』にとってはミルーダは憎い仇だろう。

「その刺客とやらは?」

「現場に駆けつけた帝国騎士団によって、その場で射殺されたと」

ざまぁないな。ミルーダも、その残党とやらも。

まぁ、最初から刺し違えるつもりだったのだろうが。

「でも、これで賽は投げられた。帝国騎士団の反マフィア派が一気に影響力を持つでしょう」

「あのルーシッドのマフィア撲滅計画も、採択されるでしょうね」

今回の件は、賛成派にとって非常に大きなエサになった。

ほら見ろ、マフィアを放っておくとこういうことになる…と。

俺達を攻撃する、絶好の口実を手に入れた訳だ。

『厭世の孤塔』も面倒なことをしてくれる。恐らく、俺達に被害が及ぶことも想定して今回の事件を起こしたのだろう。

で、そのときには自分達はもう墓の下。全く、素晴らしい復讐ではないか。感心した。

「でも…今回のことは、ミルーダの自業自得じゃないの?もとはといえば、あの人が『孤塔』を騙したから…」

と、シュノさん。

シュノさんの意見は正論である。事情を知っている者なら、ミルーダが自分で蒔いた種だろ、で一喝して終わりなのだろうが。

そうはいかない。『厭世の孤塔』は、とことんまで狡猾だった。

「刺客が殺したのは、ミルーダだけじゃない。使用人として屋敷に仕えていた、無関係の一般帝国民まで無差別に殺していったんだ」

ミルーダが死んだだけなら、馬鹿女の自業自得、で済む。

でも、無関係の使用人達まで殺したとなれば、話は別だ。

マフィアの残虐性を主張する、格好の材料になる。

これが、何よりも面倒な点なのだ。
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