The previous night of the world revolution
「ルレイア。帝国騎士団は、どうするかしら?」

アシュトーリアさんは、真っ直ぐに俺の目を見て尋ねた。

…嫌な質問だなぁ。

大丈夫だと思います、と答えられたらどんなに気が楽だろうか。

でも残念ながら、そうは答えられないのだ。

「…間違いなく動くでしょうね。ルーシッドのマフィア撲滅計画が採択されるはずです。我々にも影響があると思います」

それも、めちゃくちゃ影響がある。

帝国騎士団は、俺達と真っ向から対立するだろう。

うちの傘下組織、系列組織を含め、全ての非合法組織を潰す為に、帝国騎士団は総力を上げる。

そうなれば、当然…ノーダメージでは済まないな。

…お互いにな。

「私としては、無益な争いは避けたいところだけど…」

「無理でしょう。騎士団の目的は全ての非合法組織を潰すこと…つまり、我々を潰すことですからね」

ルーシッドだって、俺達を潰さなければ納得しないだろう。

「そう…。じゃあ、和解は無理、ということね」

「一応打診してみるだけはしてみましょう。でも、無理だと思っていた方が良いです」

形だけでも、和解を求める動きは見せておいた方が良い。

あくまで喧嘩を仕掛けてきたのは向こう、ということにしておかなければ。

こちらが喧嘩を吹っ掛けた悪者だとみなされてしまう。

「…分かったわ。…私も、覚悟を決めましょう」

アシュトーリアさんは、溜め息混じりに目を伏せた。

憂いを帯びた表情は、家族が、仲間が傷つくことを嘆いている。

彼女は、心から、家族を無為に死なせる争いを避けたいと思っている。

でも…避けることが出来ないなら。

それが不可能なら、やることは一つだ。

再び開いたその目は、鋭い殺気に満ちていた。

ルティス帝国最大の非合法組織、『青薔薇連合会』の首領の目をしていた。

「…全員、覚悟を決めなさい。そして、家族を守る為…死力を尽くしてもらうわ」

「はい」

ここにいる全員が、とうにその覚悟を決めていた。

家族を守る為に。

己の『正義』を貫く為に。

…帝国騎士団を、潰す。

最早そのことに、躊躇いなどあるはずがなかった。
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