The previous night of the world revolution
物心つくかつかないかという幼子の頃から。

少年に対して、厳しい英才教育が始まった。

貴族の子供として、帝王学を叩き込まれた。

礼儀作法は勿論、様々な国の言語、医学、数学、文学、物理、化学。その他諸々。あらゆる知識を教え込まれ、身に付けさせられた。

当然一朝一夕では身に付くものではない。

毎日毎日、朝昼晩、休む暇なんてほとんどなかった。

三歳の子供が、朝から晩まで机に向かってペンを動かしているなんて、そんなの普通の教育では有り得ないが。

少年は勿論、それが異常だということに気づいていなかった。

生まれたときからそんな養育環境なのだから、これがおかしいなんて思えるはずがない。

少年を教えていた家庭教師は、彼の為に両親が選んだ選りすぐりの教育係。

今でも、あの冷たい目と、怒鳴り付ける声を覚えている。

出された問題を間違える度、きつい言葉で罵られ、体罰を受けた。

辛くて泣く度に、家庭教師は言った。

今は辛くても、将来必ず、この日の苦労が必要なものだったと思えるようになる、と。

あんなものは、まともな教育ではない。

今でこそそう思えるが、当時の俺には、それが分からなかった。

実際少し前まで、これが当たり前だとばかり思っていた。

確かにきつかったし、少年時代に良い思い出なんて一つもないけれど。

この苦労は全て将来の為。将来栄華を得る為には必要な痛みなのだと。

幼い頃からそうやって、刷り込まれてきた訳だ。

少しずつ、少しずつ。

お前は、家と国の為に喜んで犠牲になる為に生まれてきたんだぞ、と。

そう信じて、疑わないように。

そんな訳で、彼は同い年の子供が玩具で遊んでいる間。

冷たい目をした家庭教師に、罵声を浴びせられながら、泣きながら…机にかじりついて勉強をさせられていた。

反吐が出るような、少年時代を過ごした。
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