The previous night of the world revolution
勉強だけではない。

同時に、剣の稽古も熱心にやらされた。

銃火器の時代に、何故そんな時代錯誤なことをするのかというと。

それが、国の伝統だからである。

そもそも、何故少年は血反吐を吐く思いで勉強に勤しんだのか。

その理由は一つだ。

将来、帝国騎士団に入り、重要な役職に就く為。

帝国騎士団について説明しておくとしよう。

何処の国にでも軍隊というものはあるが、ルティス帝国において帝国騎士団は、その軍隊に等しい存在だ。

更にルティス帝国で帝国騎士団は、政府の中枢を担う役割も果たしている。

その中でも各隊の隊長連は、文字通り国の趨勢を左右する存在だ。

帝国騎士団は10の隊に分かれており、各隊に隊長、副隊長が一名ずつ。その下に分隊長が五人いる。

そしてウィスタリア家は、代々その名誉ある帝国騎士団の隊長を担う人材を出してきた。

だから少年も、生まれたときからその帝国騎士団に入り、分隊長以上の役職に就く為に、英才教育を施されていた訳だ。

だが、単にペーパーテストの成績が良ければ、隊長になれる訳ではない。

そこで、剣の稽古が出てくる訳だ。

帝国騎士団は、古くからの伝統、慣習に重きを置いている組織。

昔から帝国騎士団で上の役職に就くには、武芸に優れていなければならない。

要するに、剣術に優れている者が選ばれるのだ。

馬鹿馬鹿しい話だが。

剣術に優れ、また豊富な知識を持つ者。そんな選ばれた人間だけが、分隊長以上のクラスになれる。

1から10ある隊は、強い者順だ。帝国騎士団で一番強い人が一番隊の隊長になり、次に強い人が二番、三番隊の隊長と続く。

そんな単純で分かりやすい、完全実力主義の世界。

代々多くの役職つきの帝国騎士を輩出してきた名家、ウィスタリア家に生まれた少年に、将来の選択肢などなかった。

母親の腹の中にいる段階で、将来は帝国騎士団に入ることが義務付けられていた。

それ以外の将来を望むような躾はされなかった。

だから俺も、幼い頃は…帝国騎士に憧れたものだった。

純粋に、将来は帝国騎士団の隊長になる、と意気込んでいた。

…あの頃は、まだ。
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