センパイ。

杏樹side


小さい背中に背負った大きなギター。

ウルフカットの襟足は脱色してある。

耳には沢山のピアス。

リップには1つ。

いつも1人で居るあの子。


「なーに見てんのっ」

「………っくりした、、」


俺らのいつもの溜まり場、空き教室の窓から外を眺めてると同じバンドのヴォーカル、六詩が驚かせて来た。


「あの子知ってる、俺」


六詩が言った。


「確かあの子シンガーソングライターで結構有名だよ、ほら」


そう言ってスマホの画面を見せて来た。


「これあの子のインスタ?」

「そう」


" ツキ " 名前の欄にはそう書かれていた。


「これ本名?」

「知らね、あの子俺の1個上だもん」


六詩の1個上ってことは高2か…

俺の1個下だな。


「ねー、早く行こうぜー」


教室のドアの前で俺らを呼ぶのは同じバンドの湊優。


「お前を待ってたんだよ!」


六詩が言う。

こうして俺らはいつもの練習スタジオへ向かった。
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