センパイ。
「ごめん、待った?」

「大丈夫です」


あたしたちは歩き出す。


「六詩たちはいいんですか?」

「なんかね、花火見て帰るって」

「杏樹さん高校最後の文化祭なのに花火良かったんですか?」

「じゃあ来年月希ちゃんが呼んでよ」

「もちろん呼びます」

「ありがと」


あっという間に家に着いた。


「ありがとうございました」

「すき」

「え…?」


今なんて…。


「月希、すきだ」


時が止まったように感じる。


「でも、あたし…」

「過去のことは知ってる。だから付き合ってほしいなんて言わない。ただ誰かに取られたくなくて、俺の気持ち伝えたの」


そう言っていつもの優しい笑顔の杏樹さん。


「また学校でね」


そう言って杏樹さんはほんとにあたしの気持ちを聞かずに帰って行った。
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