意地悪な兄と恋愛ゲーム


「おはよう、美咲。今朝は早いのね」


 次の日の朝、珍しく早起きをした美咲はダイニングの椅子に腰かけた。


「おはよ。まぁ、早起きもたまにはいいかなって…」


「昔から朝が苦手なのに無理なんかして。もう秋だけど、今日は雪でも降るのかしらね」


 母が笑いながらテーブルに朝食を並べてくれる。


 美咲が慣れない早起きをした理由はただ一つ。

 このダイニングで、朝から晴斗と顔をあわせたくなかったからだ。


 ところが早速、テーブルの上に目玉焼きが二皿、仲良く並んでいる事に気が付いた。 


「ねぇ、これ誰の?」


「晴斗のよ」


「えっ!何で!?」


「サッカー部の朝練なんですって」


 思わず、ガタンと椅子を揺らし、立ち上がった。


「どうしたの?」と、母が不思議な顔をする。


「わ、私、やっぱりもう少し寝ていようかな〜…」


「何言ってるのよ?もう制服に着替えてるじゃない?たまには早く出て、学校で予習でもしたら?」


 呆れ気味にそう言われた時、晴斗がダイニングへ入ってきた。


「おはよう、晴斗。朝食、もう出来てるわよ?」


「うん、ありがとう」


 当たり前のように、晴斗が美咲の向かい側の席に腰かける。


「…っ!」


 昨夜は晴斗の帰りが遅いおかげで、夕食を一緒にとるのは免れたが、今朝は完全にミスった!


 サッカー部の朝練があるなんて知らなかった…

 
 母がキッチンの奥に消え、シーン……と二人きりのダイニングが静まりかえっている。


 き、き、気まずい……



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