うみに溺れる。


家に帰りご飯を食べ、お風呂に入ろうとした時だった。
カーテンの隙間から見覚えのある人影が見えたのは。


「えっ、ちょっと!?こんな時間からどこ行くの!?」

「空人のとこ!!」

「スマホ!せめてスマホ持っていきなさい!」

「持ってる!」


部屋着の上に上着を羽織っていつもの散歩コースを辿っていく。

はぁ、はぁ、と息をする度に白いもやが空中で漂い薄れて消えてった。


「は、っ、空人!!」

「…え、海?おわっ、」

「うわぁっ、」


空人の名前を呼んだ瞬間、一緒にユキチまで振り返ってリードを振り切って勢いよく私に飛びかかってきた。


「おいこら!急に飛び付かねぇの!」


飼い主の意に反して、わふわふっ、と尻尾を振り回すユキチは無邪気で可愛らしい。

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