うみに溺れる。
「よーしよしよしよし」
「お前こんな時間に何してんだよ、危ねぇだろうが」
「…あんたに言われたくないんだけど」
「はぁ?俺はいいんだよ、男なんだから…」
空人からリードを奪ってユキチと一緒に数歩前を歩く。
はぁ、と小さくため息をついた後何も言わずに後ろをついて来ているようだった。
「…体調、悪いんじゃなかったの」
「まぁ、でももう治った」
「メールも返せないくらいキツかったわけ?」
「ごめんって」
「既読くらい付けなさいよ」
「付けたら付けたで、お前既読無視だー!って言って怒んだろ」
「まぁね」
ユキチの散歩コースの一部には学校へ行く時と同じく海の近くを通る。
街灯がない海は真っ暗闇で何も見えなかった。
それでも波の音は聞こえるから、確かにそこは海だと分かる。
その海が見える橋で立ち止まって真っ暗闇で何も見えない海辺を2人並んで眺めた。
ユキチは空気を読んで足元でしっぽを振りながら伏せている。