うみに溺れる。


「…雫玖さ、この海めちゃくちゃ好きだったんだよね」

「知ってる。家に居ない時だいたいここに居たし」

「特に日の出の瞬間が好きだったみたい」

「ふはっ、案外ロマンチストなのな」

「…見たかった」

「……おう」

「……一緒に、見たかったなぁ…」


あぁ、駄目だ。泣いちゃ駄目だ。
今は空人を慰めないといけないのに。

私が泣いたら、空人は泣けないのに。

声が震える私の肩を空人は引き寄せて落ち着かせようとしてくれる。
それでも、私の意思とは関係なくポロポロと涙が溢れて頬を伝って流れていく。


「…お前、朝起きれねぇじゃん」

「うるさい」

「苦手だろ、早起き」

「できるし」

「いや無理だろ」

「同じような事雫玖にも言われた!」


さすが俺、と得意気な空人に腹が立った。
幼なじみだからお互いの事はなんでも知ってるんだ。

…私は、どれだけ雫玖の事を知っていたんだろう。

クゥン、というユキチの鳴き声がして足元を見るとユキチが「早く散歩の続きを」と言いたげに起き上がっていた。


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