うみに溺れる。
***


雫玖の一回忌を終えた数日後。
家がすぐそこだというのに、わざわざ空人は海に呼び出してきて土曜日のお昼から私は外に出た。


「ねぇ、家すぐそこなんだからさ。わざわざ呼び出さなくてもよくない?」


寒いんだけど、と浜辺に着くなり空人の背中に文句を言い放った。


「悪かったな」

「何?もうちょっと寝たかったのに」

「もう昼だぞ。太るぞ」

「うるさいわ。余計なお世話」


少しの間が空いた後、空人はおもむろに私に四角いケースを渡してきた。


「…この前の一回忌の時、おばさんから預かってたんだ。…これ、きっと海宛のだからって」

「……なに、これ、」


カパ、とケースを開けるとそこには指輪が差し込まれていた。
太陽の光を浴びてキラキラと光っている。


「…なんで、」

「ごめん、海」

「え?」

「……多分、俺のせいだ」


今日は風が一段と強いからか、波の音が激しい。
空人の声はそんな中はっきりと聞こえた。


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